あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「運び屋」 (2018年)

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2018年 アメリカ 116分
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、 ブラッドリー・クーパー、 ローレンス・フィッシュバーン

老人の麻薬運び屋。 ★★★☆

ユリの花栽培が生きがいだったアールは、そのためには家族も顧みずの人生。
その結果として孤独な老人生活を送っていたのだが、ひょんなことから運び屋を引きうけることになる。
その報酬は驚くほどに大金だった。こりゃ、なんかあるぞ。

アールの特異なところは、ヤバイものの運び屋に自分がなっているということに気づきながら、平然とそれを受け入れるところ。
なにしろ麻薬の運び屋だから、一回の報酬も大金である。
お金が欲しいアールは、次もやるよ、運転は任せておけ、といい気なもの(笑)。

そのお金で新車のトラックは買うわ、つぶれそうになった退役軍人の拠り所の店をたて直してやるわ、有意義に使っている。

アール像が好かったのは、結構脳天気なところ。
飄々としていて、どこか人生に達観しているような感じがある。年齢のなせる技か。
だから普通の人だったらビビってしまうような危ない人たちを相手にしても、まったく動じない。
アールは次第にマフィア達にも好かれていく。

運び屋の仕事も、飄々と、時に自分勝手にやるものだから、かえって取り締まりの目をくぐり抜けたりもしてしまう。
う~ん、こういうのって、好いなあ。

本質的には真面目なアールだが、悪いことにもちゃっかりとのってしまえる鷹揚さもある。
だいたいがマフィアのボスに勧められたからといって、90歳で若いお姉ちゃんと楽しもうというのだから、まあ、見上げたものである(苦笑)。

大量の麻薬を運んでいる謎の運び屋を捕まえようとする捜査官にブラッドリー・クーパー
そんな彼は、ドライブインで出会った老人がその運び屋とも知らずに、言葉を交わす。
このあたりは、最後でまた二人が出会うのだなと思いながら観ているのだが、いい演出だった。

最後、捕まり服役することになったアールだったが、ちゃんと刑務所の中で花を栽培していた。
状況をポジティブに捉えて生きてゆける能力があるのだろう。
ということで、後味もよく、さすがイーストウッドというところだった。

「キャプテン・マーベル」 (2019年)

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2019年 アメリカ 124分
監督:アンナ・ボーデン
出演:ブリー・ラーソン、 サミュエル・L・ジャクソン、 ジュード・ロウ

マーベルもの。 ★★★

満を持して登場といった感じの本作。ヒロインの名前からして”マーベル”だぜい(本当は、マー・ベルだけれどね)。
時代は1990年代と、アベンジャーズも登場していなければ、フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)もまだお偉いさんではない頃。

カリフォルニアのビデオショップの屋根を突き破って落ちてきたのがヴァース(=キャプテン・マーベルブリー・ラーソン)だった。
天からふってきて、怪我一つしていない彼女は何もの?

ブリー・ラーソンといえば、あの設定が大変に印象的だった映画「ルーム」のヒロイン。
苛酷な運命にわが子と一緒に向き合っていたヒロインだった。
すっかり知性派だと思っていたそんな彼女が、今度は(荒唐無稽な)敵と戦うなんて(笑)。

ヴァースは記憶をなくしていて、ときおりフラッシュバックのような映像を思い出すだけ。
私は何者? 私はこれからどうすればいいの?

実は彼女はクリー帝国の優秀な兵士だったのだ。
そして、クリー人の宿敵のスクラル人が、彼女の記憶に隠された秘密を狙っていたのだ。
そのスクらル人はDNAレベルで自在に姿を変えられる能力を持っている。
これはとても厄介。味方の誰に変身しているのか、まったく見破ることができない。
誰も信用できないぞ。

ということで、大変に楽しめる内容だった。
ジュード・ロウもあういうことだったのだね。
それにフューリーがあんなに猫ちゃん好きでメロメロになるとは! ジャクソン、可愛いじゃないの(笑)。

それにしても、キャプテン・マーベル、めちゃくちゃ強いんじゃね。
パワーはあるわ、腕からフォトンブラストという破壊力のあるビームは飛ばすわ、空も飛べるわ(もちろん宇宙空間もOKで~す)・・・。

こんなに強いんだったら、フューリーーがアベンジャーズを創設したときから一員になっていたら好かったのに。
と思っていたら、ちゃんとこれまではアベンジャーズに加わっていなかった事情も説明されていた。なるほどね。

さて、いよいよアベンジャーズの最終章。
本作のエンドロールの後のシーンで、グースは飲込んでいた4次元コアを吐き出す。
え~と、この四次元コアはその後どうなって、だれが持っているのだっけ?
復習しておいた方が好いのかあ?

「ブラックパンサー」 (2018年)

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2018年 アメリカ 134分
監督:ライアン・クーグラー
出演:チャドウィック・ボーズマン、 ダナイ・グリラ

マーベルもの。 ★★☆

ブラック・パンサー(チャドウィック・ボーズマン)は「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」で初めて観た。
お、こいつは何者?とおもったものだった。
やっとこの映画でその出自が明らかに。

ブラック・パンサーの母国ワカンダでは“ヴィブラニウム”という希少鉱石が産出される。
これがとてつもなく凄いパワーを持つ金属。
このヴィブラニウムの秘密を守るためにワカンダ王国は世界から隠れていたのだが・・・。

設定として面白かったのは、ブラック・パンサーの特殊能力はある秘薬でもたらされている点。
王位を継承するためにはこの特殊能力を封印した状態で相手に勝たなくてはならない。
なるほど、ね。

アフリカの奥地に、隠されていた超文明社会の映像は美しかった。
それに、その王位継承のための一騎打ちも緊張感のあるアクション場面だった。

ブラック・パンサーの言葉に「危機に陥ったときに、賢者は橋を架け、愚者は壁を作る」というのがあった。
こりゃどうみてもトランプ大統領を皮肉っているとしか思えない。
だいたいが、ヴィブラニウムを自分だけのものにするのではなくて、全世界のために使おう、というこの映画の発想が、アメリカ・ファースト、自分の国さえよければそれでいい、という思想に真っ向から反対しているわけだ。

マーベルものの中でも、物語自体は比較的単純一直線だった。
なにも難しく考えるところはなく、ただただきれいな画面とアクションを楽しめばよい映画だった。

それにしても、トニースタークのアイアンマンはヴィブラニウムで作り直さないの?
チタン合金製の今よりも頑丈になると思うのだがなあ。
(確かトニーのお父さんがキャプテン・アメリカの盾を作ったはずだった。あの盾はヴィブラニウム製ではなかったっけ?)

「ZOO」 (2004年)

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2004年 日本 119分 

怪奇な物語のオムニバス。 ★★★

乙一の同名短編集を映画化したオムニバス作品。
斬新な発想が持ち味の彼だが、なかでもこの短編集が一番好いのではないだろうか。
イヤミスにも似た読後感はあるのだが、ということで鑑賞。

第1話 「カザリとヨーコ」(監督:金田龍)。
母(松田美由紀)に一人は可愛がられ、一人は虐待される一卵性双生児のカザリとヨーコ(小林涼子)。
ある日、二人は1日だけ入れ替わることにするのだが、母はヨーコだと思ってカザリを殺してしまう。
お母様、私はいつも苛められていたヨーコだよ。捻りがいい。

第2話「SEVEN ROOMS」(監督:安達正軌)。
突然、理由も分からずに小さな部屋に閉じ込められた少年(須賀健太)と姉(市川由衣)。
部屋の片隅を下水が流れていき、毎日パンひときれだけが与えられる。
同じような7つの部屋に女性が一人ずつ閉じ込められていて、夕方、順に一人殺されては、またあらたに一人誘拐されてきているようだ。何とかして逃げ出さなくては・・・。
姉弟がとった究極の選択は、とても切ない。
集中で一番印象的な作品だった。これだけなら★★★☆。

第3話「陽だまりの詩」(アニメ・監督:水崎順平)。
田園地帯に住む科学者によって作られたアンドロイドの少女。
実は世界でたった一人の生き残りだった科学者は、自分は間もなく死ぬ、と少女に言う。
SFファンタジーで美しく、後半にあっというネタが秘められていた。

第4話「SO-far そ・ふぁー」(監督:小宮雅哲)。
交通事故で死んでしまった父母(杉本哲太鈴木杏樹)が少年の前にあらわれる。
父母はお互いに相手が見えないようで、少年は二人の間で気持ちが捩れ始める。
主役の小学生が上手いなあと思って観ていたのだが、なんと15年目前、11歳の神木隆之介だった。すごい。
この物語も最後に、えっ、そうだったのか!となる。さすが乙一

第5話「ZOO」(監督:安藤尋)。
廃園となった動物園で発作的に女性(浜崎茜)を殺した男は、毎日彼女の死体写真を撮り続ける。
それほど捻りもなく、一番平凡だった。 

1話が25分程度のオムニバスなので、あまり身構えずに観ることはできる。
しかし、それぞれにかなり重い内容ではあった(特に1話、2話)。
3話の神木君も好いですよ。

「ちはやふる -結び-」 (2017年)

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2017年 日本 128分
監督:小泉徳宏
出演:広瀬すず、 野村周平、 松岡茉優

競技カルタ部の青春の第3作目。 ★★☆

競技カルタ部の青春を描く「ちはやふる」の第3作。
前2作が、競技カルタってこんなに肉体勝負事なのだと知らされて面白かった。
だからこれはいわゆるスポ根青春ものなのである。

ヒロインの千早は高校3年生になっていて、最後の全国大会へ臨む。
”無駄美人”の千早は恋愛などには鈍感なのだが、周りの男どもはそうはいかない。
幼なじみのカルタ仲間の太一(野村周平)と新(新田真剣佑)は、ともに千早に恋心を抱いて三角関係が秘かに生じ始める。

今は別の高校へ通っている新は千早に告白をして、彼女のカルタ部と闘うために新しい部を作る。
そこには個人戦で千早を破ったこともある準クイーンもいたのだ。
しかも彼女は新が好きだったのだ。
新が好きなのは千早だったのね。ようし、彼女になんか負けないわよ。

なんといってもヒロイン役の広瀬すずが可愛い。
高校時代にこんなに可愛い子がいるのだったら、私も絶対に競技カルタ部に入っていたなあ(笑)。

今回は団体戦が中心となっている。だからその戦法、駆け引きも面白い。
一斉に札を取っていくのだから、どの対戦者たちにも残っている札は同じなわけだ。
最後の2枚になったときに、どちらが次の1枚(運命札)を取るかが勝負の分かれ目になる。
5つの対決のなかで3勝を挙げるために同じ札を自軍に残しておくという戦法をとるわけだが、残った札のどちらにそろえるか。
このあたりの駆け引きが面白かった。

「恋すてふ」と「忍れど」の2枚が残る。
「忍れど」は2枚札。一方の「恋すてふ」は6枚札。さあ、どちらを自軍に残すのが有利なのだ?
おまけにすでに読まれた札が何であるかによって決まり字は刻々と変化する。
これは奥が深いなあ。

ひとつ疑問に思っていたことがあった。
競技カルタでは札を取るときにぱあ~っと勢いよいよく札を払う。数枚の札が空を舞う。
あれじゃお手つきをしても(隣の札を払っても)判らんのじゃね?と思っていた。
いやいや、ちゃんと決まりがあった。
出札がある陣の札は何枚払ってもお手つきではないというルールだったのだ。なあんだ。

前2作は競技カルタの世界が物珍しくて大変に面白かった。
第3作ともなると、その物珍しさが薄れて物語勝負となっていた。
ほんわかとした片思い合戦も絡んでいて、雰囲気は悪くなかった。
でも、そのあたりは何も競技カルタ特有のことではないので、☆半分減となった。

でも、それにしても、広瀬すずは可愛かったなあ(汗)。

「3月のライオン」(前編)(後編) 2017年

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2017年 日本 前編138分・後編140分
監督:大友啓史
出演:神木隆之介、 有村架純、 染谷将太、 倉科カナ

天才将棋棋士の青春もの。 (前)★★★☆ (後)★★★

9歳のときに交通事故で家族を失った桐山零(神木隆之介)は、プロ棋士の幸田(豊川悦治)に引き取られて育つ。
自分には将棋しかない、という悲愴な決意で精進を重ねて中学生でプロ棋士になった零。
今、17歳になった彼は隅田川河畔で独り暮らしをしている。

将棋界では、昨年から実際に中学生棋士だった藤井プロが評判となっている。
私は将棋には疎いのだが、碁を見るのは好きである。
囲碁界では、今年10歳の仲村菫小学生プロが誕生した。
これは今までの11歳でのプロデビューの藤沢里奈プロの最年少記録を抜いている。
(ちなみに私は、今年20歳となった藤沢女流本因坊・女流名人の大ファンである。)

前編は、これまであまり知らなかった将棋の世界が展開されて大変に面白かった。
プロ棋士って、あんな風に将棋会館に出かけていって対局をするんだなあ。
プロは対局で勝ってこそ自分の存在を示すことができる。
強いものだけが残り、弱いものは淘汰されるのが勝負事の世界。

零の育ての父、幸田には2人の子どもがいて、幼い頃からプロ棋士を目指していた。
しかし父は2人に奨励会(プロへなるための修練の場)を止めろという。
今の零に勝てないようでは、この先頑張ってもとうていプロにはなれないぞ。
実の子よりも親友の忘れ形見の方が才能があるとなれば、親としては辛い。
その現実を突きつけられてグレる子どもの心理もよく判る。

その育ての父・幸田も零に敗れて獅子王戦のリーグから陥落していく。
勝負の世界は非情だ

孤児となった零にとっては、生きて行くためには将棋を頑張らなければならなかったのだろう。
俺には将棋しかないんだ!と叫ぶ主人公には、やはり常人には理解不可能な苦悩があるのだろう。

少年時代からの黒縁眼鏡の零を演じて、神木隆之介は好かった。
原作漫画は知らないのだが、おそらく主人公の雰囲気はこの通りなのではないだろうか。

違和感があったのは幸田の娘の香子(有村架純)。
零の宿敵となるA級棋士・後藤(伊藤英明)と不倫を続けながらも、零に微妙な態度を取って見せたりする。
女心はよく判らん。

後編になると、将棋の世界以外の主人公の周りの人間ドラマが絡んできていた。
零が偶然に知り合って心の安らぎを得る川本3姉妹がいた。
本当に好い人たち。
しかしその川本家の次女ひなちゃんのいじめ問題、そして3人を捨てて出奔した川本家の父親問題など。
原作漫画をなぞっているようなのだが、個人的には、なにも将棋映画で扱わなくてもいいのでは、とテンションが下がってしまった。

しかし、前後編合わせて4時間半越えを、退屈することなく1日で見終えた。
原作はまだ書き継がれているよう。
とすると、「ちはやふる」のように続編が作られる?
獅子王戦はどうなった?

「横道世之介」 (2012年)

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2012年 日本 160分
監督:沖田修一
出演:高良健吾、 吉高由里、 綾野剛

青春もの。 ★★★

吉田修一は好きな作家で、この映画の原作も大変によかった。
特別な事件も起こらない大学生の日常を淡々と描いているのだが、あれをどのように映像化したのだろう?

大学進学のために長崎から上京してきた横道世之介高良健吾)。
世間ズレしていなくて、お人好し。明るくて素直。
そんな世之介が、真面目な同級生(池松壮亮)や、自分はゲイだと告白する友人(綾野剛)と友情を育む。
また年上の女性に憧れたり、超お嬢様の祥子(吉高由里)と微妙な恋人関係になったりする。

携帯電話もデジタルカメラも、まだない時代の青春像。
少しのんびりしていた雰囲気のあった時代を背景にして、ノスタルジックな気持ちにもさせてくれる。
そしてときおり、その後の登場人物の様子が挟み込まれる。
彼らが懐かしく世之介のことを思い出したりする。

(以下、ネタバレ)

この物語の一番のポイントは、世之介が何でもないことのように亡くなってしまうこと。
それも、ラジオから小さく聞こえてくるニュースとして観ているものには伝えられる。
何でもない日常生活を送っていた者が、何でもなかったことのように不在になってしまう。
それがいいようのない寂しさとして伝わってくる。

ときおり登場人物の何年後かの様子が挟み込まれていた。
その後の祥子がアフリカへ出かけるような(おそらく難民救済ボランティアのようなことで)たくましい女性に成長していたのには、驚かされる。
あの(世間知らずの)お嬢様からの大きな差異にやられた。

そして世之介の遺品として祥子に渡された写真のエピソードが好かった。
先にその写真を見せておいて、最後にその写真を世之介が撮ったときの様子を映し出す。
好い終わり方だった。
(この写真については、文字であらわされたものよりも映像は強かった)

原作小説を映画化する場合は、文字で表された魅力とは別の映像魅力を創り出さなくてはならない。
この”横道世之介”は、小説で充分に魅力的な物語世界となっていた。
で、映画化で新しい魅力が付け加わったかというと、個人的にはそれほどのものはなかった。
いささか残念。