あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「ハード・ヒット」 (2021年) 車から降りたら爆発するよ

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2021年 韓国 94分
監督:キム・チャンジュ
出演:チョ・ウジン、 イ・ジェイン

車から降りたら爆発だ。 ★★☆

 

2015年のスペイン映画がオリジナルで、2018年にはドイツでもリメイクされたようだ。
3回も各国で映画化されるとは、よほど物語が面白いのだろうな。

 

銀行支店長のソンギュ(チョ・ウジン)は、出勤のついでに2人の子供を学校へ送ろうとしていた。
すると、発信者不明の電話がかかってくる。
座席の下に爆薬を仕掛けた、車から降りたら爆発するぞ。
おいおい、お前、何を言っているんだ、そんな冗談は止めろ。

 

ソンギョはいささか尊大な雰囲気の人物として描かれている。上司にはへいこらして部下には厳しい。
仕事の業績を上げるためにはかなり悪どいこともしてしまいそうな人物像。
そうした、あまり共感できそうもない人物像が、子供と一緒に命の危険にさらされたときにどうするのか、これは上手い作り方だった。

 

同じように爆薬を仕掛けられた同僚の車がソンギョの眼前で爆発し、電話の脅迫は本当であることが判る。
どうすればいいんだ? 子供達だけでも助けてやりたいぞ。

 

この設定で直ぐに思い浮かべるのは、キアヌ・リーブスサンドラ・ブロック「スピード」
そしてその元ネタになったのではないかとされている高倉健の「新幹線大爆破」。
しかし、それらは減速すると爆発するという設定だった。本作では車は停車は可能である。
となれば一番似ているのは、ジェイソン・ステイサムの「トランスポーター3」か。

 

さて。
息子は大怪我をしてしまい、直ぐに病院に連れて行かなければならない。
それなのに、ソンギョは爆破事件の犯人とされてしまって警察に終われる羽目になる。
犯人は大金を送金しろと要求してくる。さもなければ息子は死んでしまうぞ。
どうする? どうする?
沢山のパトカーとのカー・チェイスも迫力があった。

 

やがて姿をあらわした犯人(イ・ジェイン)。彼の動機は、かってソンギョがおこなったあくどい銀行の仕打ちへの復習だった。
あ、これ、半沢直樹と一緒ではないか。もっとも、犯人は倍返しだっ!とは叫ばなかったが・・・。

 

なりふりかまわずに子供達を助けようとするソンギョ。
そして父親に対して反抗的な態度だった娘も心を開いてくる。
絶体絶命の状況の中での娘との約束、「今度の週末には一緒に映画に行こう」は、いささかベタだが好かった。

 

まあ、細かいことをいえばツッコミどころもある。
最後、ソンギュと犯人が一緒に車ごと海に突っ込む場面がある。
これまでの設定通りとするならば、衝撃でソンギョの体が座席から浮いたときに車は爆破してしまうはず。
でもそうはならないんだよなあ。どうして?

 

まあ、細かいことは言いっこなしという類の映画。
充分に楽しめたので文句は言いません。長さも1時間半でちょうどよかったのでは・・・。

 

「1秒先の彼女」 (2020年) 時間が止まる恋愛ファンタジー

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2020年 台湾 119分
監督:チェン・ユーシュン
出演:リー・ペイユー

ちょっと変わった恋愛ファンタジー。 ★★★

 

郵便局で働くシャオチー(リー・ベイユー)は小さい頃からせっかち。
いや、せっかちというよりも、すべてのことに他の人よりワンテンポ速く行動してしまう。
彼女には1秒先に起こることの予知能力がある?
それはそれですごいことだと思うのだが、そんな彼女は仕事も惰性、恋にも縁のない日々を送っていた。

 

ヒロインは初めて観た人だったが、それほどの美人というわけではない。
どこかドジな、しかし愛敬のある役柄には、憎めない感じでちょうど合っていた。
そんな彼女は街で知り合ったイケメン・ダンス講師に一目惚れ。しかも彼も自分に好意を抱いてくれている?
二人は七夕バレンタイン(台湾にはこんなのがあるんだ・・・)にデートの約束をする。やったわよ!

 

張り切ってデートに出かけようとバスに乗り込んだシャオチー。
しかし彼女が目を覚ますと、既にバレンタインの翌日になっているではないか。おまけに変な日焼けまでしている
えっ、これはどうしたこと? 何が起こったの?

 

シャオチーは気づいていなかったのだが、実は彼女に片思いをしている男がいた。
それが、彼女とは逆に、いつもすることがみんなよりワンテンポ遅れるバス運転手のクアダイ。
そんなクアダイにチャンスがやってくる。なんと、彼以外の人の時間が止まったのだ。
クアダイが運転していたバスに乗っていたシャオチーも静止している。

 

おお、これは・・・。
この静止した時間を利用して彼女とデートしよう!
クアダイは彼女だけをバスに乗せて海岸に出かける。そして動かない彼女と2人だけのデートを楽しむ。

 

ここからのクアダイの思い出写真撮りがなんとも楽しい。
あんなポーズで撮ってみたり、こんな場面を作って撮ってみたり。
(大方の男性が夢見るような(イヤらしい)ことはまったくしませんよ 汗)

 

しかしよく考えれば、これはストーカーが自分の夢を叶えたお話ではないか。
でも不快ではなかったのはクアダイの恋心がとても純粋だったから。
そしてシャオチーが彼の行為をきっと受け入れるだろうなと思わせるおおらかさの持ち主だったから。

 

クオダイ以外の人々の時間が止まった説明も一応されていた。
いわく、彼が常に周りから1秒ずつ遅れていたので、その溜まった遅れを取り戻すために他の人の時間が止まった・・・。
ふ~ん、そうだったんだ・・・。

 

好い感じの挿話になっていたのが、失踪したままのシャオチーの父親の話。
ちょっとしたものを買ってくると言って家を出たきり、父親は帰ってこなかったのだ。どうして?
その父親とシャオチーは街で再会する。
ほら、これを買ってきたぞ、と言って父親はまた立ち去っていく。
不可解な、呆気にとられるような父親なのだが、なにかほのぼのとしてくるものがあった。

 

原題は「消えた私のバレンタインデー」といったことのようだ。
この邦題はちょっと意味不明ではあるが、興味を持たせるには十分なものになっていた。

 

憎めない痴漢オヤジが登場したりもしますが、基本的にみんな善人。
(ただ、あのダンス講師だけはなにかよからぬ事を企んでいたように思えるぞ。)
ほのぼの、にっこり。そんな後味のファンタジー映画でした。

 

「ポンペイ」 (2014年) このポスター・・・おい、おい、早く逃げろよ

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2014年 アメリカ 105分
監督:ポール・W・S・アンダーソン
出演:キット・ハリントン、 エミリー・ブラウニング、 キーファー・サザーランド

厄災のなかで愛は・・・。 ★★

 

歴史上の大災害の一つとして知られているイタリア・ベスビオ火山の大噴火。
それによるローマ帝国の大都市ポンペイが壊滅した。
西暦79年のことである。この映画はその災害に巻き込まれていく恋物語を描いている。

 

ローマ軍に滅ぼされた騎馬民族ケルト人の生き残りのマイロ(キット・ハリントン)が主役。
捕らえられて奴隷となった彼は、剣闘士となって死ぬまで見世物の殺し合いをしなければならない運命。
そんな彼を見そめた恋の相手が街の有力者の娘カッシア(エミリー・ブラウニング)。
奴隷と令嬢の、典型的な身分違いの恋物語

 

この主役の二人はなかなかに好かった。
キット・ハリントンは「エターナルズ」で観たけれども、少し寂しげな風情のイケメン。推しだな。
エミリー・ブラウニングは初めて観たと思う。
可愛いのだけれども、それほど豪華さはない(汗)。令嬢というよりは庶民の娘っぽい雰囲気かな。

 

嫌~な恋敵もちゃんとあらわれる。
カッシアにご執心なローマ帝国元老のコルベスは、その権力をかさにきて結婚を迫る。
このコルベス役に、あのキーファー・サザーランド
かつては人々のために24時間戦い続けた彼は、ここではにこりともしない冷酷な権力者。

 

いくらマイロとカッシアが愛し合っていても、身分制度が社会を支配している以上は、所詮は許されるはずもない恋。
そこですべての既成の価値観を超越す事態として、火山の大噴火が起きるのである。
みんなが生死の狭間に立たされれば、身分制度なんて崩壊する。

 

前触れとして街がときおり揺れていたのだが、後半、一気に火山爆発の災害映画となる。
地震による建物の倒壊、地割れ、そして火山弾が容赦なくポンペイの街に降り注ぐ。
船で逃げようと港に集まった人々を津波が襲う。

 

こうしてポンペイの街は非常に短時間で消滅したらしい。
(そのために火山灰の下からは当時の人々の生活ぶりを示す遺物が大量に発掘されている。)
そんな厄災の中でなおも愛を確かめ合う主人公2人、そしてそれを最後まで邪魔しようとする嫌~なサザーランド。
さあ、彼らはどうなる?

 

(以下、ネタバレ)

 

最後、火山弾が降りそそぐ中を白馬に乗って逃げている二人。
そこでマイロはカッシアに、お前一人で逃げろ、と言う。
二人が乗ったのでは馬が早く走れない、お前だけでも逃げのびてくれ。

 

おお、これはあの「タイタニック」ではないか。
ケイト・ウインスレットを木ぎれに乗せて助けて、自らは海中に沈んでいったディカプリオの行為ではないか!
しかし、本作ではカッシアは二人で運命を共にする道を選んだのだった。

 

ポンペイの街の再現、火山の噴火場面など、映像の迫力はあったのだが、いかんせん、物語が駄目だった。
身分違いの恋には、出会いの場面、その後の展開ともに、新しさはなかった。
火山噴火の中での人々の右往左往ぶりや、主人公たちの行動もこれまでのなにかで観たようなものだった。

 

ということで、あまり期待しないで観ることをおすすめする映画でした。
監督の奥さん(ミラ・ジョボビッチ)が出ていたら、少しは違った?
(火山弾で壊れた建物の中からゾンビが出てきたりして・・・)

 

「355」 (2022年) 美女ばかりの諜報員、大活躍

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2022年 イギリス 122分
監督:サイモン・キンバーグ
出演:ジェシカ・チャステイン、 ペネロペ・クルス、 ダイアン・クルーガー
    ルピタ・ニョンゴ、 ファン・ビンビン

美女諜報員軍団。 ★★★

 

華やかな美女たちの活躍を描くオールスター映画。
描かれるのは、世界中のコンピューターを支配できてしまうデバイス(英語ではドライバーと言ってた)の争奪争い。
悪人たちがこんなものを戦争やテロで使ったら大惨事になってしまうぞ。
何とか敵の手から奪い取らなくては・・・。

 

CIAのメイス(ジェシカ・チャステイン)とドイツ連邦情報局のマリー(ダイアン・クルーガー)は反目しながら、共にそのドライバーを入手しようとする。
それぞれの国の諜報機関に属しているのだから、それぞれの上司の命令があるわけだ。
しかし、最終的な目的は同じ。二人は次第に共闘するようになる。

 

そこにコンピューターのスペシャリストであるMI6のハディージャルピタ・ニョンゴ)が協力し、コロンビア諜報組織の心理学者グラシー(ペネロペ・クルス)も嫌々ながらメンバーに加わってくる。
おお、仲間が増えてきたな、華やかになってきたな。

 

全体の雰囲気としては、「オーシャンズ8」のような美女集団が「チャーリー・エンジェルズ」のように活躍する、というもの。
それに、あれらよりはアクション映画として頑張っている。
なんでも制作には、あの「ジェイソン・ボーン」のスタッフ陣が加わっているとのこと。なるほどね。

 

場面も諜報員ものらしく世界中を駆け巡る。
コロンビアに始まり、ワシントン、パリ、ベルリン、マラケシュと、めまぐるしく動き続ける。
エンタメものにはこういった派手な展開も必要だよなあ。

 

そして、上海でおこなわれるオークションにドライバーを隠した骨董品が出品されることを突き止めたメイスたち。
さあ、会場に乗り込むわよ。
正装のドレス姿の4人は美しい。中でも、ああ、ペネロッピーが一番きれいだな。
このとき御年40歳。しかし、美しい。たいしたものだ。

 

あれ、ファン・ビンビンが出てこないなあと思っていたら、そのオークションの主催者だった。
彼女だけは悪役・・・?
彼女も中国武術を駆使してアクションを見せてくれるぞ。

 

心理学者であるためにアクションはまったくできないという役柄だったペネロッピー。
他の4人がばんばんと相手をやっつけていくのに、何もできずにおろおろ。
しかし、最後の最後にそのペネロッピーがバシッと決めてくれる。おお、やってくれたぜぃ!

 

コードネームの「355」とは、アメリカ独立戦争下で活躍されたとされる正体不明の諜報員からきているらしい。
せっかく集まった美女軍団なので、これで解散しないで欲しいなあ。
その気になれば続編、できるっしょ?

 

「白い恐怖」 (1945年) ヒッチコック・サスペンス

1945年 アメリカ 111分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:グレゴリー・ペック、 イングリッド・バーグマン

安定のヒッチコック・サスペンス。 ★★☆

 

ある精神科病院に新らしい院長エドワーズ医師(グレゴリー・ペック)が着任してくる。
この若い新院長がイケメン。同僚医師たちの誘いをすべて袖にしていた堅物女医のコンスタンス(イングリッド・バーグマン)は一目で彼に惹かれてしまう。

 

すぐに親しくなっていくエドワーズとコンスタンスだったが、彼は白地に縞の模様を見ると発作を起こすという病を持っていた。
何故、そんな白いものに恐怖をおぼえるのだ?

 

眼鏡をかけ、白衣姿のイングリッド・バーグマンは気品があって美しい。
原題は「魅せられて」といった意味のようで、この映画の主役はコンスタンスであることがわかる。
恋する乙女(!)の一途な想いで事件が解決されていくのだ。

 

一方のグレゴリー・ペックは未だ若々しい。デビューしたてだったようだ。
途中で精神分析をうけていた彼が 「ローマ!」 と何度か呟く場面がある。
えっ! グレゴリー・ペックが・・・。
思わずニヤリとしてしまうのだが、「ローマの休日」はこの映画の8年ほど後に撮られているので、まったくの偶然ではある。なあんだ・・・。

 

さて。
やがて、新院長だと言ってやってきたエドワーズは、その名前をかたった偽者だったことが判明する。
本物のエドワーズ博士は殺されている? とすれば、犯人はこの偽者エドワーズか?
みんなも警察も偽者エドワーズを疑うのだが、コンスタンスだけは彼を信じて一緒に逃避行に出かけてしまう。

 

このあたりからサスペンス風味がぐっと濃厚になってくる。
偽者エドワーズの本名はバランタインで、なにかの事故が原因で記憶喪失にもなっていたのだ。
夜中に夢遊病者のようになったバランタインが剃刀を持って階下へ向かう場面は、これからどうなるのだ?という緊迫感に満ちていた。

 

発作を誘発していたのは白地に描かれたすじ模様だったのだが、一体どうしてそれが発作を誘発する?
そして本物のエドワーズ博士はどうなっていた?
はたして、コンスタンスが魅せられたバランタインは無実だったのか?

 

(以下、ネタバレ)

 

すべての元凶だった前院長にしてみたら、来るはずのないエドワーズ医師があらわれたら驚いただろうな。
それも別人物がエドワーズの名前をかたってあらわれたのだから・・・。
そのあたりの扱いの不自然さが、ヒッチコック監督にしてはやや甘かったかな・・・。

 

でも、安心して楽しめるひとときを与えてくれます。安定のヒッチコック・サスペンスです。
監督はエレベーターから降りてきていましたね。

 

「スターリンの葬送狂騒曲」 (2017年) ソ連の権力争いコメディ

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2017年 イギリス 107分
監督:アーマンド・イアヌッチ
出演:スティーブ・ブシュミ、 オルガ・キュリレンコ

ポリティカル・コメディ。 ★★

 

今、世界が揺れ動いている元凶となっているロシア。今だからこそ鑑賞しておこうかと・・・。
ソ連当時の独裁者スターリンが急死した後の後継者争いを皮肉に描いたコメディ映画である。

コメディといっても、明るく楽しいことは全くない。
政治って、こんな馬鹿馬鹿しいことで動かされているのか? 
誇張されているとはいえ、こんな類いのことが現実におこなわれていたことが本当に怖ろしい。

 

ソビエト連邦連邦共産党書記長スターリンは絶対的な権力を持っていた。
ちょっとでも彼の機嫌を損ねればすぐに粛正されてしまうのだ。
取り巻きたちも粛正を怖れて、もはや通常の判断はできなくなっている。

 

スターリンに嫌われたら終わりなので、どんな話題がうけたかをメモするという、もう漫画のような馬鹿馬鹿しさ。
忖度の極みである。某国のトップに対する忖度も一時は酷かったが、さすがにこんなことはなかったのだろう(と信じたい)。
ソ連でもまさか本当にここまでのことはなかったのだろうが、ひょっとするとあり得たかもしれないなと思えてしまうところがソ連の(そしてロシアの)怖ろしいところ。

 

そんなスターリンは1953年に自室で倒れ、集まった側近たちが右往左往するうちに死んでしまう。
優秀な医者はみんな反体制だというので粛正してしまい、残っていたのは藪医者ばかりだったので、まともな治療も出来なかったというあたりは皮肉そのもの。

 

さて、そうなると側近たちはスターリンの後釜を狙って姑息な権力闘争を始める。
人民委員部の最高権力者のベリヤは、スターリンの恐怖政治を支えて粛正をおこなってきた人物。
フルシチョフ(スティーブ・ブシュミ)は党委員会第一書記だった。
この二人が対立するのだが、どうやら当初はベリヤの方が権力の座には近かったようだ。
ベリヤはマレンコフを書記長代理に仕立ててこれを操ろうとする。

 

このあたり、名前は聞いたことがあったのだが、どんな人物だったかまでは知らなかったので、勉強になった(苦笑)。
やがてフルシチョフはベリヤと対立する軍の最高責任者ジェーコフと手を組む。
もうどす黒い思惑が交差するドタバタ劇。
しかもそのドタバタ劇には情け容赦なく処刑劇が付いてくるのだからすさまじい。
並の神経でこんな政治闘争はやっていられないぞ。
(だから並の神経ではない奴ばかりが権力に群がっているのだな)

 

足の引っ張り合いをして(国民はどこに行ってしまった?)、一度は後継者と目されたベリヤは失脚する。
ベリヤは裁判を受けることもなく銃殺され、ガソリンで焼かれてしまう。
その後、ソ連共産党中央委員会がソ連の最高機関となり、フルシチョフが最高権力者になったのだった。

 

当時の権力者たちをコケにしまくったコメディ映画だったが、まったく楽しくはなれなかった。
というのも、ソ連(ロシア)をいくら茶化しても現実にこんな怖ろしいことをする国になってしまっているのだから。

 

今のプーチン政権も基本的にはここに描かれたような世界なのだろう。
彼の思惑一つで、今でもリストに載れば直ぐに粛正されてしまうのだろう。
権力の座にあるプーチンを誰も止めることができない構図になっていることが、本当に怖ろしい。

 

もちろんロシアやベラルーシでは上映禁止になった映画です。

 

 

 

「ノイズ」 (2022年) 島のみんなのために隠し通さなくては・・・

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2022年 日本 128分
監督:廣木隆一
出演:藤原竜也、 松本ケンイチ、 神木隆之介、 黒木華

閉鎖的な島でのサスペンス。 ★★★

 

ポスターの惹き文句を見て欲しい。「殺した、埋めた、バレたら終わり」。
これがこの映画の概要を言い尽くしている。うまい。

 

周囲から孤立した小さな島で、幼なじみの妻(黒木華)と幼い娘と暮らす圭太(藤原竜也)。
今、彼が栽培している黒イチジクはマスコミでも取り上げられて評判を呼んでいた。
5億円という政府からの巨額の補助金交付も取りつけ、過疎の島の復興の目玉となっていた。
島のみんなから期待されている圭太。

 

猟師をする傍ら、そんな圭太の仕事を助ける幼なじみの純(松山ケンイチ)。
さあ、島のために圭太と一緒にこのイチジク栽培を発展させて頑張るぞ。
そんな折に、島の駐在警官となって戻ってきた幼なじみの真一郎(神木隆之介)。
おお、よく帰ってきたな。さあ、3人で島のために頑張るぞ。

 

原作は同名のコミック(未読)。
舞台を、周囲から切りはなされたのどかな平和な島に設定したことによって、これから起きる事件が際立つようになっている。
島の住民以外には誰にも邪魔をされないのどかで平和な暮らしが、部外者によって大きく乱されるのだ。
それは”ノイズ”に他ならないのだ。

 

サスペンスものだから当然なのだが、この後の展開についてはあまり知らずに観る方が楽しめる。
大きな流れとしては、ポスターの惹き文句通りに、島へやってきたサイコパスのような男を3人はふとしたはずみで殺してしまう。
こんなことが明るみに出たら、自分たちだけではなく島の人たちの生活そのものが駄目になってしまう。
幸いこの男のことは誰も知らない、死体を埋めてしまおう。

 

必死に殺人事件を隠蔽しようとする3人。
悪いのはどう見たって殺されたサイコパス野郎だったのだから、観ている者も3人に肩入れして観ることになる。
大丈夫かな、バレずに済むかな・・・。

 

元気はつらつ明るく社交的な圭太役の藤原竜也は安定の(というか、いつも通りの)演技。
それに反して松山ケンイチ演じる純はやや根暗。どうも鬱屈したなにかを抱えている雰囲気を出している。
もう一人の真一郎は警官のくせにおどおど。人は好いんだが、性根が座っていないな、こいつは。
3者3様でのこの組み合わせが上手かった。

 

映画の始めに、島へやって来たサイコパス野郎は人殺しをしていた。
その死体が見つかり、のどかな島に警察が大挙してやって来る。
犯人は行方不明になっているサイコパス野郎に違いない、奴を探し出せ、と警察は必死に捜査をする。
おいおい、隠したサイコパス野郎の死体は見つからないだろうな。大丈夫だろうな。

 

とんでもない事件が起こって右往左往する村人たち。
目撃したのかしなかったのか、認知症気味の爺さん役に柄本明。上手い。
村の復興のためならなりふりかまわない町長役の余貴美子の怪演も印象的だった。笑える。

 

さあ、平和だった島に紛れ込んできたノイズをめぐる顛末はどうなったのか。
面白く観ることができた。
(最後にあったひとひねりは、多分そうじゃないかとは思っていたよ 汗)。