あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「インフィニット」 (2021年) 記憶を受け継いで生まれ変わるぞ

2021年 アメリカ 106分 
監督:アントワン・フークア
出演:マーク・ウォールバーグ、 キウェテル・イジョフォー、 ソフィー・クックソン

SFアクションもの。 ★★★

 

エヴァン(マーク・ウォールバーグ)は精神不安定者として生きてきた。統合失調症の診断を受けたこともある。
どうも俺は他の人と感覚が違うようで、うまく生活できないなあ・・・。
彼は身に覚えのない記憶と、それによって生じる気持ちの不安定さに悩まされていたのだ。
しかし、それは病気ではなかったのだ。

 

エヴァンは、習ったこともない日本刀の作り方を知っていて、すごい刀を仕上げたりする。
どうして俺はこんな事を知っているんだ?

 

実は、世界には500人あまりの前世の記憶を全て持って生まれ変わっている人たちがいたのだ。
彼らはインフィニットと呼ばれ、エヴァンもその一人だったのだ。
彼は前世の記憶を持って生まれ変わってきた人間の一人だったのだ。

 

輪廻転生という言葉がある。仏教用語の気がするが、古代のインド思想によるものらしい。
この映画はその輪廻転生が物語の軸になっている。
インフィニットたちは、輪廻転生するのはもう嫌だとするニヒリストのグループと、過去の記憶を大事にして人類を進歩させようとするビリーバーのグループに分かれて争っていたのだ。

 

宗教には詳しくないので曖昧なことなのだが、仏教的には輪廻転生は苦しみだと考えるようだ。
そしてその無限の循環から抜けだすのが解脱ということらしい。
すると、インフィニットたちの中ではニヒリストの方が解脱を目指しているグループということになるのだが・・・。
(しかし、真の解脱とは、心の中の我を捨てて葛藤の原因となる煩悩から離れて静寂と平和を得ることだ、とも書いてある。よく判らん 汗)

 

ま、とにかく、ニヒリストたちは輪廻転生を終わらせるために、なんとすべての命を破壊する装置・エッグを作りだしてしまったのだ。
このエッグの奪い合いがメインの物語。
設定はちょっと凝ってみましたというところだが、要するに2チームに分かれての争奪戦アクション映画。

 

肝心の、前世の記憶を受け継いでいるという部分が、物語にそれほど活かされていない。
そのために派手なアクション映画、という範疇から抜け出ていない。
そこは残念だった。
もうちょっと前世の記憶が大きな謎の解明の鍵になる、といった展開があれば好かったのだが。

 

しかし、フークア監督だけあってアクション場面は迫力満点だった。
冒頭のカー・チェイスもなかなかに見せてくれるし、日本刀を使ってのチャンバラ場面もある。
あまり背景のことを考えずにただ派手な画面を楽しむ、というのがこの映画の正しい見方?(苦笑)

 

(ツッコミ)
冒頭で主人公が秘密を隠した場所について。
あの追われている状況で「look inside(中を探せ)」と言ったら、誰でも、体の中に埋め込んだな、って思うのではないだろうか。
レントゲンかCTを撮れば一発で判るだろうし。

 

最後、生まれ変わった人たちが新しい出会いをする。
ここは好くできていた。で、☆加算。

 

「アンビュランス」 (2022年) 単純明快、救急車で逃げろ!

2022年 アメリカ 136分 
監督:マイケル・ベイ
出演:ヤーヤ・アブドゥル・マティーン2世、 ジェイク・ギレンホール、 エイザ・ゴンザレス

救急車でのカー・チェイス。 ★★☆

 

妻の癌治療の為に大金が必要なウィル(ヤーヤ・アブドゥル・マティーン2世)。
金の工面を義理の兄ダニー(ジェイク・ギレンホール)に相談したところ、よし、一緒に銀行強盗をしよう、なあに、危ないことはなにもないさ。

 

人が好くて真面目そうなウィル。渋々、というか、無理矢理というか、ダニーの計画に参加させられてしまう。
首謀者の兄のダニー、根っからの悪党ではないのだが、浅はか、成り行き任せで、どこか行っちゃってる。
レンホールはこうした常識を踏み外している人物を演じるのが上手い。
なにしろ、あのぎょろ目が好いんだよね。

 

さて。簡単に終わるはずだった銀行強盗だったが、あれよあれよと予想外の事態が続いて、ありゃあ、銃撃戦になってしまったぞ。
死傷者も出て救急車までやって来たぞ。
ついに警官隊に包囲されてしまったぞ。逃げなきゃ。どうする?

 

どんどんとテンポよく物語が進む。なにも考えることなし。
次々と起こる出来事を、ああっ、とか、おおっ、とか思いながら観ていれば好い映画。
仕事で疲れた夜にビール片手に楽しめる映画。こういう映画も必要だよな。

 

さて。ダニーとウィルは救急車ジャックをして逃走を始める。
車中には、撃たれて重症の警官と救命士のキャム(エイザ・ゴンザレス)が乗っていたぞ。
ここからは、追跡してくる沢山のパトカーからの大逃走劇である。
警察はヘリコプターも動員して上空からの追跡もおこなう。
マイケル・ベイ監督なので、このカー・チェイスは迫力のある展開、映像となっている。

 

逃走する救急車内ではキャムが必死で手当てを続ける。
なんと、電話で外科医の指示を仰ぎながら手術までしてしまうのだ!
揺れる車内でそんなことができるの?と思ってしまうが、そこはまあ、マイケル監督の顔を立てることにしよう(汗)。

 

そう、このキャム役のエイサ・ゴンザレスが好いのだ。
救急車に乗せた患者は病院に届けるまで絶対に死なせない、という信念で仕事をしている。
彼女の頑張りが映画をもり立てていた。

 

途中で仲間の倉庫に逃げ込み、逃走車を塗り直して色を変えてしまうのには感心した。
なるほどね、ヘリの追跡をまくのには有効だな。

 

ウィルが銃で撃たれてしまったりもするのだが(撃ったのは誰だ?)、最後は何となくみんな好かったねという雰囲気となる。
めでたし、めでたし・・・。
退屈する暇もなく観ることができるのだが、それにしても、この内容の映画だったら136分はちょっと長すぎたのではないかい?

 

(ちょっとツッコみ)
銀行から奪った大金、結局ウィルが自分のものにしてしまった?
そんなんで好いの?

 

普通に面白くって、後には特に何も残らないっていう潔いタイプ。
これで90分くらいにまとめていてくれたら、言うことなかったのだが。

 

「シャンドライの恋」 (1998年) あなたは私のためにそれほどまでに・・・

1998年 イタリア 94分 
監督:ベルナルド・ベルトリッチ
出演:タンデイ・ニュートン、 デビッド・シューリス

重厚な恋物語。 ★★★☆

 

アフリカのある国で、シャンドライ(タンディ・ニュートン)の夫は政治活動で逮捕されてしまう。
ローマへやってきた彼女は、住み込みの使用人として働きながら医学の勉強をする。
屋敷の主人は寡黙なピアニストのキンスキー(デビッド・シューリス)。
彼はやがて肌の色の違うシャンドライに強く惹かれていく。

 

それぞれが屈折したものを抱える男女の恋物語である。
単純には割り切れないそれぞれの思いが、古い重厚な屋敷を舞台に絡み合う。
それをベルトリッチ監督が余韻のあるタッチで描いている。

 

ある日、気持ちを抑えきれなくなったキンスキーはシャンドライに愛を告白する。
しかし、激しく動揺した彼女は「じゃあ夫を刑務所から出して!」と叫ぶ。
そうか、君にはご主人がいたのか・・・。知らなかった、許してくれ。

 

はじめのうちは、シャンドライになんとかして近づこうとするキンスキーが、なんか陰気なストーカー体質の嫌なやつだな、と思いながら観ていた(汗)。
でも、違った。
彼は本当にシャンドライを愛していたのだ。
彼女が幸せになれるのだったら、僕のこの生活を失ってもいい・・・。
シャンドライが知らないところで、彼はとても無償の行為をしてくれていたのだ。

 

舞台となる古い屋敷にはらせん階段があり、二人がそれを上り、降りる場面が幾度となく映る。
映画前半には屋敷内にはたくさんの骨董品も飾られていて、豪華で重々しい雰囲気を出していた。
キンスキーが一日中引いているピアノの音がそのらせん階段に響く。
そしてその屋敷の調度品は次第に減っていったのだ・・・。

 

ヒロインを演じたタンディ・ニュートンが大変に魅力的である。
くるりとした瞳が、純真で一途。そして思わぬ恋心に揺れ動くのである。
彼女は2年後に、トム・クルーズの「MI:Ⅱ」でイーサン・ハントの恋人役に抜擢されたのだった。

 

愛する女性の夫を取り戻すために尽力を尽くす、といえば、先日観たラッセル・クロウメグ・ライアンの「プルーフ・オブ・ライフ」と同じ構図である。
しかし男女の気持ちの屈折さはかなり異なる。
ベルトリッチ監督だけあって、こちらの方がよりエモーショナルだった。
(あちらは基本的にはアクション映画だったしね 苦笑)

 

(以下、最後のネタバレ)

 

夫が釈放されてローマに着いた早朝、裸身でベッドから起き上がったシャンドライが迎え入れた男は、どちら?

彼女が流した涙の意味は果たして?


観ている者にその後の展開をゆだねている。
どちらもあり得るよなあ。

 

 

 

「プルーフ・オブ・ライフ」 (2000年) 交渉人は実戦もするぜ!

2000年 アメリカ 135分 
監督:テイラー・ハックフォード
出演:ラッセル・クロウ、 メグ・ライアン、 デイビッド・モース

ゲリラからの人質奪還。 ★★★

 

テリー(ラッセル・クロウ)は、国際的な人質事件を専門に扱うプロの交渉人。
冒頭の前振りで、中東での人質奪還の様子が描かれる。
命がけの救出である。迎えのヘリコプターとの約束場所に約束時間に到達していなければならない。
ゲリラ組織との交渉人はこんな実戦もおこなうのだということを始めて知った。大変な仕事だ。

 

さて今回は、会社の指示で南米へ飛び、反政府ゲリラに誘拐されたアメリカ人技師ピーター(デイヴィッド・モース)の奪還交渉をおこなうことになる。
ピーターの妻アリス役に(メグ・ライアン)。
ひたすら夫の無事の救出を願ってテリーを頼りにする。
実はピーターの会社は保険をキャンセルしていたのだが、テリーもアリスの哀願に気持ちを動かされて交渉を続けることにする。

 

ゲリラは本当に誘拐ビジネスをおこなうとのこと。
そしてそのゲリラと交渉にあたるプロがいて、会社は要人が誘拐されたときの保険にも入っているとのこと。
怖ろしい状況の世界が同じ地球上にあるのだな。

 

テリーは粘り強く交渉をおこなう。
いくらまでなら身代金を出すか、本当に人質は生きているのか(原題は、”人質が生存している証拠”)。
相手を怒らせてはいけないし、ただ言いなりになるわけにもいかない。
やはりプロの仕事は大変だ。

 

35歳の精悍なラッセル・クロウが生き生きとしている。このころから華がある。
しかしクレジットではメグ・ライアンがトップだった。
この頃は彼女の方が人気度は上だったのだな。
そのクロウだが、22年後の57歳での「アオラレ」。熊のような太り過ぎ体型のおじさんになるとは!

 

人質になっているピーターの様子も描かれる。
ジャングルの中での過酷な生活を強いられる。
それに、拷問とかをされるわけではないが、ゲリラの気まぐれでいつ殺されるか判らないという恐怖は常にあるだろう。

 

さて、持久戦となった交渉が続く日々、テリーとアリスの間には微妙な感情が交差するようになっていく。
もちろんテリーはピーターを取り返すために困難な仕事をしている。
それが成功すればアリスはまた夫の元に去って行く。
禁断の恋だなあ。

 

結局、最後は傭兵部隊を率いて実力行使での人質奪還ミッションとなる。
まるでランボーのような展開で、これはこれで派手で面白かった。
しかしこの武力行使が成功するのだったら、これまでの地道な交渉は何だったんだ?という気にもなってしまう。う~む。
ま、変化が出て好かったということにしておこう。

 

無事にピーターを救出してアリスの元に送り届けるテリー。
ヘリコプターから降り、何もなかったように言葉も交わさずに別れるテリーとアリス。
まるで「カサブランカ」のようだよなあ。
しかし、二人が交わした視線にはピーターも何かを感じてしまったのではないかと、この後が心配になったぞ。

 

(余談)
実生活でもメグとラッセルの不倫が噂となり、メグと当時の夫のデニス・クエイドは結局離婚してしまったとのこと。ありゃ、ありゃ。

 

緊張感溢れるゲリラからの人質奪還と、淡い禁断の恋感情を上手く組み合わせた作品でした。

 

「アリス&ピーター・パン」 (2020年) アンジーが出ているのだけれど・・・

2020年 イギリス 94分 
監督:ブレンダ・チャップマン
出演:アンジェリーナ・ジョリー、 デビッド・オイェロウォ

童話素材のファンタジー。 ★☆

 

一時期、童話に材を求めた映画はかなり作られた。(今も?)
赤頭巾ちゃん、眠り姫、シンデレラ、白雪姫・・・。作り手の想像力を刺激するのだろうか。
しかし残念なことに、ほとんどの作品で原作の童話をこえる映画にはなってはいなかった。
単に原作のパロディだったり、変形に終わっていた。残念。

 

この映画では、不思議の国のアリスとピーター・パンを合体させている。
童話の超有名人二人がもし兄妹なら、という発想はなるほど、そうきたか!と思わせる。
ちょっと期待させるところを狙っているなあ。

 

でも、これまでの童話題材作品があまり芳しくなかったので、この映画もそれほどではないのでは・・・、と思っていた。
それなのになぜこの映画を観たかといわれれば、そりゃ、アンジェリーナ・ジョリーがでていたから。ただそれだけ。
で、結論から言うと、まったく面白くなかった(涙)。

 

8歳のアリスは、10歳の兄のピーター、そして12歳のもう一人の兄と一緒に野山で遊ぶ日々を送っていた。
楽しい日々。
しかし上の兄が亡くなってしまい、悲嘆に暮れる一家。
お父さんは(デビッド・オイェロウォ)賭け事に逃げるし、お母さん(アンジェリーナ・ジョリー)はお酒に逃げる。駄目な両親だな。

 

物語は、なんとか不思議の国のアリスとピーター・パンを絡ませようとしている。
お節介で居丈高なおばさんは、赤の女王のパロディ。
アンジー扮するお母さんは白の女王様。
時間を気にする兎が出てきたり、アリスはお茶会をしてみたりと、頑張っているのだが、どれもとってつけた感が否めない。
ティンカー・ベルも登場するのだが、あれもちょっと無理筋だったのではないかい。

 

ところでこの映画鑑賞の目的であるアンジーだが、ひとときの激やせぶりからは好くなっているようで、美しかった。
まあ、それだけは嬉しいことだったのだが、映画の好いところがそこだけというのはなあ・・・。

 

映画の冒頭と最後は、母親になったアリスが子ども達におはなしをする場面。
なんだ、アリスはまったく普通の人ではないか。

 

映画にするからには、原作にインスパイアされたところから始まる世界が広がって欲しかった。
残念な映画だった。世間の評価はどうなのだろうか?

 

「バジラーオとマスターニー」 (2015年) この恋、なにがあっても貫く

2015年/インド/158分 
監督:サンジャイ・リーラ・バンサーリー
出演:ディーピカー・パードゥコーン、 ランビール・シン、 プリヤンカー・チョープラー

恋愛もの史劇。 ★★★

 

お正月だから、長い映画だって観てしまうぞ(笑)。

 

舞台は18世紀のインド中西部。
マラーター王国の宰相兼将軍バジラーオ(ランビール・シン)は、ムガル帝国軍に包囲されたブンデルカンド王国を救う。
そしてブンデルカンド王姫のマスターニー(ディーピカー・パードゥコーン)は(彼女は武芸にも秀でていた)、ともに戦ったバジラーオに一途な恋心を抱く。

 

この映画は、すでに妻のいる勇者に恋をしてしまった異教徒女性の物語。
マスターニーはすべてを捨ててマラーター国のバジラーオの元へ赴く。
実はバジラーオは、勇敢に戦ったマスターニーを称えるためにに愛用の短剣を贈っていたのだ。プンデルカンドではそれは結婚申し込みの意味を持っている行為だったのだ。
しかし、バジラーオには美しい正妻のカーシー(プリヤンカ・チョープラー)がいるぞ。

 

たいていのインド映画には並大抵ではないレベルの美女が登場する。
中でも私の一押しが、マスターニー役のディーピカー・パードゥコーンである。
「チャンドニチョーク・トゥ・チャイナ」という(B級)映画で初めて観たときには、世の中にこんな美女が本当にいるのか!と驚嘆したものだった。
彼女の初映画出演は大ヒット映画「恋する輪廻」だったのだが、そのとき21歳。
そしてこの映画の時は29歳。初々ししい魅力から成熟した魅力へと変わってきている。

 

それに加えて、カーシー役のプリヤンカー・チョープラーも負けず劣らずの美女である。
正統派美女という基準でいえばプリヤンカーの方が上かもしれない。
何しろ彼女は19歳の時にミス・ワールド大会でグランプリを取ったほどの美女なのだ。
この映画の時は30代半ば過ぎになっているはずだが、落ち着いた大人の魅力である。

 

さて。自分を慕ってやってきたマスターニーにバジラーオも激しい恋に落ちる。
しかし、彼女がイスラーム教徒だったこともあり、2人の関係は周囲の人たちには認められない。
特にひどい仕打ちをしてきたのはバジラーオの母親、そして弟。
異教徒のお前なんか息子の愛人でしかない、結婚なんてできるわけがないでしょ。
酷い迫害を受けるマスターニーをバジラーオだけが庇い続けてくれる。

 

インドの宗教事情はややこしい。お釈迦様の国だが仏教徒は案外少なくて、主となるのはヒンドゥー教イスラム教のようだ。
私のような宗教寛容者(無関心者?)には理解しがたい対立の原因になっていたりする。
ヒンドゥー教の聖なる色はサフラン色で、イスラム教では緑色。
大事なときに使う布の色でも対立するほどなのだ。

 

しかし一番つらいのは正妻のカーシーのはず。愛する夫にいきなり愛人が現れて、しかも夫はその愛人にぞっこんなのだ。
それなのにカーシーは何とかしてマスターニーの存在を認めようとしてくれるのだ。
心が優しくて、とびきりの美女で、しかも夫に惚れぬいている。
こんな好い奥さんがいるのに、他の女性に心を動かされたバジラーオ、結局お前が一番悪い。
みんな、お前の優柔不断な女好き(!)の性格のために起きた悲劇だぞ(でも、そう言ってしまっては映画が成り立たないか・・・)。

 

お金をかけた豪華なお城のセットで、女性たちの美しい衣装。
しかし物語は三角関係の悲恋ものである。はっきり言ってそれほど目新しいものではない。
やはりこの映画、超美女のヒロイン二人で充分に元が取れたなあというところである。
映画の中程すぎにこの二人のダンス・シーンがある。絢爛な群舞で、これぞインド映画!であった。

 

物語はマスターニーがどんどんと悲しい運命に遭うようになっていく。
愛するバジラーオとの子どもも生まれたというのに、刺客に襲われたり、牢獄にとらわれたり・・・。
バジラーオの母親とか弟とか、それにバラモンの僧侶達の意地悪ぶりは腹だたしいことこの上ない。くそっ、こいつらのせいで・・・。

 

インド映画らしく2時間半越えの長さである。
しかし退屈することはなく、可哀想なディーピカーがどうなってしまうのだろうと、完全に感情移入して観てしまった(汗)。

 

 

「クリミナル・サスペクツ」 (2000年) 組織の思惑が交差する狭間で若者は・・・

2000年 アメリカ 91分 
監督:ドミニク・フォルマ
出演:ジェフ・ブリッジス、 ジョン・エイブラハムズ

単純シチュエーションのサスペンス。 ★★★☆

 

平凡な自動車整備士のレニーは、実は裏の仕事として、ギャングの逃走屋をしていた。
車をスタンバイしておいて、事件を起こした現場からギャングたちをすばやく逃げ延びさせる、という仕事である。
確かな運転技術がいるし、街の道路事情に精通していないとできない仕事だな。

 

さてある日、ギャングのリックは紳士然としたジミー(ジェフ・ブリッジス)を誘拐し、レニーの運転するバンに閉じこめる。
しかしそのバンを取り囲んだ男たちにリックは殺されてしまう。
えっ、これ、どうなっているんだ? これからどうすればいいんだ? パニクるレニー。

 

ここからの展開はユニークである。
緊張感が続くサスペンスものなのだが、舞台はその停まったままの(敵側に停められたままの)バンと近くのドラッグ・ストアだけなのである。
そして、レニーとジミーの駆け引きのような会話が中心に物語が進む。

 

そして、バンの周りにいる襲撃してきた敵対ヤクザ、ドラッグ・ストアの夫婦、近くでアパートの窓掃除を職人たち、などが登場する。
限られた舞台の中で、彼らはどんな風に物語に絡んでくるのだ?
世評は芳しくないようなのだが、緊張感が持続して、いやいや、どうして、面白いではないか。

 

状況に途惑うレニーは死んでしまったリックの携帯電話で、リックのボスに連絡を入れる。
そのボスは、敵対するジミーのボスと腹の探り合いの交渉をしている。
レニーよ、そのままジミーを逃がすなよ。車から出るんじゃないぞ。
一方のボスも、バンを囲む手下に、よし、そのまま包囲していろ。車を動かされるんじゃないぞ。

 

好くできている。
はじめは無関係なように思われていた登場人物たちが次第に接点を持ち始める。
このジミーの拉致には700万ドル強奪事件をめぐってのギャング組織同士の争いがあったのだ。
さあ、その大金はどこに隠されている?

 

冒頭からあらわれていたよぼよぼと歩く頑固爺さんがいた。
はてこの人物はこの事件にどう絡んでくるのだろう?と思っていた。
おお、大詰めになって見事に大役を果たしたではないか。
ああ、そうだったのかと納得させられた。上手く作ったな。

 

この映画は実際に起きた事件を題材にしているとのこと。
へえ、そうなんだ。すると、無事に逃げ延びたレニーの告白あたりが元になっているのかな。

 

あまり話題にはならなかったようですが、サスペンス好きにはお勧めの1本ですよ。