2002年 アメリカ 99分
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ジョージ・クルーニー、 ナターシャ・マケルホ-ン
不思議な惑星をめぐるSF映画。 ★★★★
交信が途絶えてしまった惑星ソラリスの探査ステーションへ、心理学者のクリス(ジョージ・クルーニー)が調査に向かう。そのステーションにいた科学者は死亡していたり、狂気のような戯言をくり返すばかりになっていた。
原作はスタニスワフ・レムの名作SF小説「ソラリスの陽のもとに」。
1972年にはアンドレイ・タルコフスキーが「惑星ソラリス」として映画化しており、非常に高い評価を得ている。
私も若いころに観たはずなのだがあまり内容を覚えていない。たぶん難解すぎたのだろう。
原作小説では、不思議な海のイメージをはじめとする惑星ソラリスそのものの存在感が強くあったが、本作ではそれはほとんどなくなっている。
代わりに大きな位置を占めるのは、ソラリスが人間に対しておこなう幻覚作用のほうである。
そこでも、ソラリスが何故人間に対してそのような行為をおこなうのか、人間は他の宇宙意識とどのように接触するべきなのか、といった、哲学的ともいえる問題提起はまったく欠如している。
結局のところ、本作では、惑星ソラリスの存在は単なる道具立てでしかない。
そして、ソラリスが作り出す実体化された人の記憶の意味がテーマとなっている。
愛の記憶が実体化されたときに、そのフェイクはその人にとってどれだけの意味を持つか、いいかえれば、愛するという行為は一体<何を>愛したのか、ということがテーマとなっている。
非常に極端な状況をつくりあげて、そこで浮き彫りになってくる<愛>の意味を問うという、SFを舞台にした恋愛映画になっている。
ソラリスの捉え方からしてタルコフスキーのオリジナル版とは全く異なっており(もちろん、原作小説とも全く違っている)、そこが本作の評価が別れる所以だろう。
私には、青を基調とした画面の美しさもあいまって、愛について考えさせる映画として悪くはなかった。
たぶん、オリジナルを観ている人は別物だと考えた方がよいでしょう。