1969年 ルクセンブルグ 116分
監督:バルベ・シュローデル
ヒッピーの愛の映画。 ★★
ヒッピーと言っても、今の若い人には何も伝わらない言葉だろう。
しかし60年代後半から70年代初めにかけて、無軌道な若者たちの文化として一時代を築いたものだった。
あの有名な「シャロン・テート事件」も、狂気にかられたヒッピーたちの犯行とされた。
自分を変えたいということでヒッチハイクの旅に出かけたドイツ人青年ステファンは、ヒッピーのパーティでエステルと恋に落ちる。
彼女を追って渡った地中海のイビサ島で、2人だけの日々を堪能する。
先のことなどこれっぽっちも考えない退廃的で、刹那的な享楽に堕ちていく恋愛の日々。
やがて二人はドラッグに溺れていく。
実はエステルは島の実業家ウオルフの愛人だった。
そしてそのウオルフは麻薬密売の元締めだったのだ。
エステルはウオルフのヘロイン200包を盗んで、ステファンとの生活に全てをかけていく。
音楽は、これも当時のプログレッシブ・ロックの旗頭であったピンク・フロイドである。
私もピンク・フロイドが音楽をしているという理由だけで鑑賞した。
しかし、その音楽の使い方は完全に裏に回っていて、ちょっと肩すかしであった(涙)。
海と空がこれでもかと広がるイビサ島の風物は美しい。
二人はほとんど全裸に近いような姿で海辺の家で暮らしている。
(生活はどうやって維持していた?)
セックスとドラッグがすべてであるような気怠い日常が続く。
二人でどこまでも墜ちていくような日常だ。
やがて2人のあいだに微かな亀裂が入り始め、それが広がっていく。
あの時代を知っている者にはある程度納得して観ることができる物語だった。
(ベトナム)戦争に駆り立てられるぐらいならフリー・セックスで自由になろう! というようなムーブメントだった。
しかし、今の人たちがこの映画を観たら、主人公の二人の行為はとても理解も共感もできないものだろうな。