2004年 メキシコ 98分
監督:セバスチャン・コルデロ
出演:ジョン・レグイザモ
TV報道サスペンス。 ★★☆
スペイン映画、イタリア映画と来て、今度はメキシコ映画。メキシコ映画なんてこれまでなんて観たことがあっただろうかと思ってしまう。
ところが意外にたくさんあったのだ。
まずは、なんといってもアレハンドロ・ホドロフスキーがいた。
それにアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥやギレルモ・デル・トロなどのメキシコ人監督の作品のいくつかはメキシコ映画であった。
どれも濃いのが特徴だなあ。
TVレポーターのマノロ(ジョン・レグイザモ)は、子どもばかりを狙う連続殺人鬼“モンスター”の取材でエクアドルへやって来た。
被害者の子どもの葬儀を取材中に、彼らは被害者の兄弟が車にひかれる現場に居合わせる。
運転していたのは真面目な聖書販売員のビニシオ。
ビニシオは怒りに興奮した群衆に集団リンチに遭い、それから逮捕されてしまう。
実はこのビニシオなる人物は、冒頭から少し不思議な行動をしているところが写されていた。
海で身体を洗っているのだ。どうして? 何をしたあとなの?
いつも笑顔を絶やさない聖書販売人のビニシオなのだが、観ている者はその笑顔の陰に何かありそうだと思ってしまっている。
映画はそれほど繊細な作りではなく、どちらかといえば無骨な感じなのだが、このあたりは不穏なものを感じさせて上手い。
さて、留置場を訪れたマノロに、ビニシオは番組の力で釈放させて欲しいと懇願する。
そうしてくれたら、“モンスター”に関する極秘の情報を提供するよ。
どうしてあんたがそんな情報を持っているんだ?
モンスターに会って打ち明け話を聞いたんだよ。ほら、犯人て誰かに秘密を打ち明けたくなるものだろ。
本当かなと思いつつもTV報道番組をしたマノロの行為で、結果的にビニシオは釈放される。
このマノロの行為は、彼がスクープを狙ったために真実とは異なる印象操作をしてしまった、とも言えそうだ。
どこの国でもマスコミの影響力は大きいのだな。
そのあたり、どこの国のTV番組は(ワイドショーも)よく自覚して放送して欲しいものだ。
ビニシオが聖書販売人であるというところが微妙である。
彼は、うわべを見れば善良そうで、妻を愛し、その連れ子も可愛がっている。
とても極悪非道なことをしそうな人物には見えない。
しかし、観ている者は疑心暗鬼に駆られて映画を観ているよ。
そのうちに、マノロもビニシオがモンスターではないかと疑い始める。
警察への告発か、それともスクープか。
結局マノロはそのままマイアミの本社へと帰っていく。
(以下、ネタバレ)
その頃、ビニシオの小学生ぐらいの義理の息子は、お父さんがモンスターなのではないかと疑い始めている。
最後、ビニシオはその義理の息子を家から連れ出す。
そして廃墟へと連れて行く。
そこで映画は終わっていく。ビニシオがその後何をしたのかは観る人の想像に任されている。
ビニシオが実際にモンスターだったのかどうかは最後まで明かされない。
しかし普通に考えれば、ビニシオが犯人であり義理の息子までも・・・と、誰でも思う結末は一緒だろう。
とても後味の悪いものだった。
メキシコ映画、たしかに濃い。
ひと味違うサスペンスものを探しているあなたにお勧め(苦笑)。