あきりんの映画生活

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「愛と銃弾」 (2017年)

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2017年 イタリア 134分
監督:マネッティ兄弟
出演:ジャンパオロ・モレッリ、 セレーナ・ロッシ

異色ノワール・ミュージカル。 ★★★☆

 

スペインの恋物語にに続いて、今度はイタリアの恋物語。さて、どうか?

開けてびっくり玉手箱!といった感じの映画だった。
なにがって・・・、オープニングはマフィアのドンを思わせる人物の荘厳な教会葬。喪主の妻は棺に取りすがって泣いている。
ところが、棺の中に横たわった死体が突然歌い出す! 俺はなんで死んじゃったんだろ~
えっ?

 

こりゃ尋常な映画じゃないな、と気分を引き締めて、以後を鑑賞。
なにが起こっても驚かないぞ。
結果的にはこの決意があって好かった。これがなかったら、乗り遅れて取りのこされていただろう。

要するにこの映画、ギャング抗争もの+敵に追われる恋人たちの逃避行+ところ構わず歌い出すミュージカル(+B級映画)、なのだ。

 

敵組織との戦いに嫌気が差したドンは、何から何まで濃い奥さん(!)にそそのかされて死んだことにする。
身代わりの死体(始めに書いた歌い始める死体、ね)は用意した。
跡目も譲ったし、事業も腹心の部下に分け与えた。
これで自分たち夫婦はこれまでに稼いだ大金を手にして、どこか外国で余生を送るぞ。

 

ところが、生きている自分を看護師のファティマ(セレーナ・ロッシ)に見られてしまう。
こりゃいかん、細工がばれてしまう。彼女を消せっ。
ところが、差し向けられた二人の殺し屋の中の一人チーロ(ジャンパオロ・モレッリ)は、ファティマとはかって恋人同士だったのだ。
燃え上がる二人。お前のためなら俺は命をかけるぜ。

 

ということで、二人を殺そうとやってくるかっての仲間たちをチーロはバンバン殺していく。
義理よりも愛だっ、恩義よりも愛だっ、友情よりも愛だっ。
愛こそすべて! 愛のためには何だって許される!
さすが情熱の愛の国イタリア映画だ。

 

そしてこの映画、いきなり始まる歌がかなり好いのである。
それも主役だけではなく、代わる代わる登場人物が歌い始めるのである。みんな上手い。
なかでもドンの後継者は、渋いだみ声で味のある歌を聴かせてくれた。
華やかな場面で、おや、この歌は?と思ったら、「フラッシュ・ダンス」の替え歌だったりもした(嬉)。

 

ときには歌う人の背後でいきなり踊りも始まる。
たとえば病院の廊下では点滴している患者たちがいきなり踊り始める。
たとえば銃を構えて対峙する一人が歌い始めると、彼がこれまで殺した人達が血まみれの姿で並んでリズムを取ったりする。
すごいでしょ。もうインド映画もびっくり!のエンタメぶりである。

 

真面目なミュージカル映画は苦手なのだが、インド映画とか、この映画などのミュージカル場面は楽しくて好い。
といって不真面目というわけでもない。ちゃんとやっている。
ただ、そのちゃんとぶりが少し外れているのだ。そこがなんとも楽しい。

 

(以下、ネタバレ気味)

 

最後にいきなり思わぬ展開を見せる。さすがにそれはないだろ、という強引ぶりだった。
えっ、えっ、その終わり方はいくらなんでも不味いんじゃないの。
・・・と思っていたら、見事にやられた。
ちゃんとオチが用意されていたのだ。おお、おお、やってくれるじゃないですか。

 

2時間半越えの尺なのだが、めくるめくような展開に長さは感じない。
イタリアのアカデミー賞にあたるヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞など5部門を受賞してます。

楽しいエンタメ映画を観たいと思っている方にはお勧めですよ。