2020年 デンマーク 117分
監督:アナス・トーマス・イェンセン
出演:マッツ・ミケルセン
復讐アクション。 ★★★
アフガニスタンで戦闘任務に就いていたマークス(マッツ・ミケルセン)は、妻の死亡連絡を受けて帰国する。
それは列車事故だったのだ.
おお、こんな事故に遭うとは、愛する妻はなんて運が悪かったのだろう。俺は悲しいよ。
とそこに、数学者だと名乗るオットーが訪ねてくる。
妻と同じ列車に乗っていたが助かったオットーは統計学の専門家で、観察力も優れている。
事故直前の不審な乗客のことも覚えていた。
そして彼は、あれは偶然の事故ではなく、仕組まれた事故だったのだ、とマークスに告げる。えっ、なんだって?!
オットーは”ライダーズ・オブ・ジャスティス”という組織があの事故を企んだのだ、と言う。
彼は友人の数学者や凄腕ハッカーと協力して、ある事件の重要証人を殺すために列車事故を起こしたのだと結論づけたのだ。
あの事故は偶然に起きたのではなく、あの組織が意図的に起こしたものなのです。
奥さんはその巻き添えを食ったのです。
それを聞かされたマークスは怒りに震える。
おのれ、この事故を起こした奴らに復讐するぞっ!
ということで、ものすごい戦闘スキルを持った主人公が妻の復讐を果たそうとするバイオレンス・アクションもの。
といってしまえば簡単なのだが、この映画、いささかひねくれている。
登場人物たちがどこかおかしいのだ。真面目なのだが、どこかおかしいのだ。
マッツ・ミケルセンといえば、善悪の役にかかわらず知的な雰囲気を漂わせていることが多かった。
しかし本作のミケルセンは直情径行そのもの。
爆発する怒りにまかせて敵を問答無用にたたきのめしていく。
おいおい、待ってくれ、それは誤解だよ。うるさい、何を言うかっ!
マークスは聞く耳を持たない。ブレーキの外れた暴走自動車!
そしてオットーとその仲間はまったくのオタクそのもの。
4人とも実生活では役に立たないようなことのエキスパートばかり。
世間からは馬鹿にされているような感じなのだが、当の本人たちはそれこそ一生懸命なのだ。
彼らはそのスキルを活かして次々に敵の情報を集めてくる。
その情報をもとに、マークスが敵地に乗り込んでは大暴れ。
チンピラを捕まえてボコボコにして、その兄貴分を探り出す。
そうして一大ギャング団の末端組織から次第に大元へと迫っていく。お前に命令を出している奴はどこにいる?
おお、無双野郎のバイオレンス復讐ものだな。
・・・ところが・・・。
(以下、ネタバレ)
えっ、あの情報は間違っていた?
すべてが終わった後で、驚きの事実が発覚する。えっ、あれ、違ったの?
じゃあ、列車事故って、本当に・・・。
結局一番割を食ったのはマークスに全滅させられてしまったギャング団(笑)。
俺たちに何の恨みがあったんだ? 俺たちがあんたの奥さんに何をしたって言うんだ?
といわれても、今更どうしようもないなあ。ごめんね、勘違いしていたんだ・・・。
愛妻の復讐劇のようで、実はアクション付きブラックコメディだった。
そして喜劇のようで、運命論にも通じる物語だった。へ?
冒頭とラストに、青い色の子供用自転車をめぐるエピソードが置かれている。
映画の本筋とは関係ないのだが、ある偶然が連鎖していく様を、ユーモラスに、少し皮肉に描いていて面白かった。
そう、すべて偶然の産物だったんだよね。