2006年 アメリカ 100分
監督:リチャード・リンクレイター
出演:キアヌ・リーブス、 ロバート・ダウニーJr、 ウィノナ・ライダー
奇妙な映像の麻薬捜査もの。 ★★
原作はフィリップ・K・ディックの「暗闇のスキャナー」(未読)。
それをデジタル・ペインティングなる手法で映画化している。
これは、実際の俳優が演じた映像を基にしてアニメーターがペインティングするという、考えただけで気が遠くなりそうな手間暇をかけたもの。
できあがった映像は、実写にしては作り物めいているし、かといってアニメに比べると格段にリアルである。
どちらとも言いかねる非現実的な実写、といった感じである。
さて物語は・・・。
物質Dと呼ばれる強力なドラッグが蔓延した近未来のアメリカが舞台。
覆面麻薬捜査官のボブ(キアヌ・リーブス)は、自らジャンキーとなりドラッグの世界へと深く潜入していく。
しかし、次第にヤク中男となったボブは自己崩壊していく。
ドラッグでのトリップや、幻覚の映像があらわれるのだが、その非現実的な世界をデジタル・ペインティングは効果的にあらわしている。
どことなく気味が悪い感じがよく出ている。すべてが悪夢世界のようなのだ。
おまけに、潜入捜査官の正体がばれるのを防ぐために、人物の外観は休みなく変化するのだ。
上司や同僚もボブの正体を知らないのだ。
ボブもまた誰が上司であるのか、判らないままなのだ。
一体、誰が誰なんだ?
さらに、ボブがジャンキーであるとの密告が入り、捜査官のボブは自分を監視しなければならなくなる。
一体、今の俺はどちらの俺なんだ?
さすがにフィリップ・K・ディック原作である。
今見ているのが現実なのか、それとも妄想なのか、主人公の心も考えも錯乱している。
それを観ている私たちも錯乱している?(苦笑)
救いのない、言ってみれば突き放したような結末に向かって悪夢世界が展開されています。
かなり観る人を選ぶかな?
ちなみに、(好きなディック原作ものでしたが)私は駄目でした(涙)。