2019年 アメリカ 88分
監督:ニック・レイジャー
立てこもり事件。 ★★
銃で武装した4名の若者が家電量販店を襲撃する。彼らは店にいた客や従業員を人質にして立てこもる。
4名は格差社会に絶望したベトナム系移民の若者だった。
1991年に実際にあった事件を元にしているとのこと。
冒頭に若者たちの家庭環境などが描かれる。
監督の立ち位置などまったく知らないし判らないのだが、彼らの背景を描くことで、事件の裏に潜んでいるアメリカの格差社会を問題視したかったのだろうか。
しかし若者たちはあまりにも杜撰。はじめは顔を隠していたのに、すぐに顔を人質たちにさらしてしまう。
外から双眼鏡などで監視している警察にもすぐに身元がばれてしまう。アホやなあ。
それにどうやって逃亡するつもりだったのだろう?
若者たちとの交渉にはゴメス刑事があたることになる。
常識のある好い人、という立ち位置で、犯人たちの要求を冷静に聞く。
そして人質の命優先にして解決を目指す。真面目なんだな。
しかしこの人もどうも華がない。較べては気の毒かもしれないが、「交渉人」のデンゼル・ワシントンとはかなりオーラが違った。
彼が交渉を頑張る傍らで、責任者である保安官はSWATに制圧計画をたてさせ、犯人狙撃、突入の準備をしていく。
こちらは短気。犯人の事情などはまったく忖度せず。
とにかく早く事件を解決したいの一心。
ごちゃごちゃ言ってないで突入させよう。
いや、そんなことをしたら混乱のなかでの人質の命が危ない。もう少し頑張って投降させる手立てを考えよう。
犯人の若者たちの要求はといえば、現金100万ドル、逃走用のヘリコプター、防弾ベスト、それに高麗人参茶。
最後の要求がよくわからないのだが、リーダーの若者はこれに執着するのだ。
若者4人の個性も描き分けられている。
リーダー格の若者は分別があり、仲間が暴走気味になるのを抑えようともする。
気が弱くて、もうこんなことは止めて家にかえりたいと訴える奴もいる。
そして激情しやすい奴がいて、事あるごとに人質を見せしめのために殺そうとする。こんな奴がいるから事件が大騒ぎになっていく。
結局、スナイパーが二人を撃ち、煙幕弾を撃ち込んでの突入が敢行される。
そして犯人、人質合わせて6人の死者が出ている。
実際のところ、彼らの目的は何だったのだろう。ヘリコプターを要求したりして本当に逃亡できると考えていたのだろうか。
行き当たりばったりの、考えのない襲撃立て諸事件だった気がする。
言ってみれば取り立てて際だった何かがあった事件ではない。
(実際の事件では40人あまりが人質となって、史上最大人数の人質だったとのこと。しかし映画は経費の関係か、人質は10人あまりで、事件の一番特異な点は消えていた)
そんな事件を映画化するのであれば、なにか斬新な視点が必要になる。
しかし、どうも映画自体も行き当たりばったりのものにしかなっていなかったなあ。