あきりんの映画生活

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「ペトラは静かに対峙する」 (2018年) お前のまやかしの幸せを壊してやる!

2018年 スペイン 107分 
監督:ハイメ・ロサレス
出演:バルバラ・レニー

家族の人間ドラマ。 ★★★

 

物語は7章からなるのだが、映画はいきなり第2章から始まる。
これから判るように、物語は時間軸がシャッフルされて提示される。しかし、各章には順番が付いているので、それほど途惑うことはなかった。

 

画家であるペトラ(バルバラ・レニー)は、大物芸術家であるジャウメを訪ねる。
田舎にある彼の家に数週間の滞在をして、教えを請いながら創作活動をするようだ。
しかし、ペトラの真の目的は別のところにあったのだ。

 

時系列が戻り、ペトラは母が亡くなる前に自分の父親が誰であるかを尋ねていた。
母はそれを語らずに亡くなったのだが、どうやらジャウメが父親らしいという感触を得たのだ。
そこで彼女はそれを確かめるためにジャウメを訪ねてきていたのだった。

 

しかし、このジャウメというのが尊大な鼻持ちならない人物。
大芸術家なのだろうが、自分以外の人の尊厳などまったく考えていないような人物。
自分のわがままを強引に押しとすような人物。
しかも、人が不幸になるのを見て楽しむような意地悪な人物。
一人息子のルカスのことも妻のこともほったらかしで、女遊びをするような人物。
嫌だねえ。

 

ジャウメの悪行によって自殺する女性まで出てくる始末。
結構どろどろした物語なのだが、ゆったりとした村の風景の中でゆったりと映画は進んでいく。
もしかすればという可能性があったために、ペトラはルカスの求愛を拒んだりもする。

 

この登場人物たちの人間関係はこれからどうなるのだろう?という緊張感が続く。
そしてジャウメが言う、お前は私の娘ではないよ。お前の母親と会った時にはもう乳飲み子のお前を抱いていたよ。
ああ、そうだったのか。

 

がっかりして村を去り普通の生活を送るようになったペトラのもとへ、ルカスがやって来る。
私がジャウメの娘でないのなら・・・。二人は一緒に暮らすようになり、子供も生まれ、平和な生活が訪れる。

 

(以下、完全ネタバレ)

 

と、ある日、ジャウメがペトラとルカスに会いに来る。
会って何を言い出すのかと思えば、なんと、ペトラ、お前は私の娘だ。
えっ、それじゃ、私とルカスは異母兄妹・・・!

 

このときのジャウメが心底うとましい。
どうして今頃になってそんなことを告げるのか、と問われて、ルカスよ、お前のまやかしの幸せを壊すタイミングを待っていたのだ。
ジャウメよ、お前はなんという卑劣な、悪魔のような心の持ち主なんだ。

 

絶望したルカスは自殺してしまう。

 

(以下、再度完全ネタバレ)

 

しかし、しかしである。ジャウメの妻がペトラに打ち明けるのだ。ルカスはジャウメの息子じゃないわ。
ジャウメの妻も不倫をしていたのだ。ルカスとペトラには血のつながりはなかったのだ。

 

異母姉妹と愛し合ってしまった男が自殺をするのだが、実は血が繋がりがなかったことがあとで判るという、ギリシャ悲劇的な物語だった。
どんどんと血脈が反転するサスペンスだった。
内容のどろどろ感と映像の静謐感が妙な違和感を抱かせる作品でした。