監督:白石和彌
出演:役所広司、 松阪桃李、 真木よう子
悪徳警察+対立するヤクザ組織。 ★★☆
監督は「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌。
道理で、観始めたときからテイストが似ていると思った。
舞台は60年代の広島の呉市(作中では”呉原市”となっているが)。
そこで対立する二つの暴力団。冒頭ではちゃんと状況説明のナレーションも入る。
とくれば、そう、これはあのヤクザ映画の傑作「仁義なき戦い」そのものである。
ジャ・ジャ・ジャ・ジャ・ジャジャ~ンという、あのテーマ音楽も聞こえてきそう。
今作はそこに「日本で一番悪い奴ら」の究極形をかぶせてきている。
呉原市の地元暴力団と、そこに進出してきた新興暴力団。こちらは広島に本拠を構える巨大暴力団の下部組織。
その二つの組織の間で動き回るマル暴刑事の大上(役所広司)。
彼のもとへ新参若手刑事の日岡(松坂桃李)が付くのだが、大上のルールを無視したやりたい放題に日岡は呆れてしまう。
大上は取り調べでは容赦なく暴力をふるうわ、暴力団からはちゃっかりと袖の下をもらうわ。
こりゃヤクザ以上にヤクザっぽい。
惹き文句は「警察じゃけぇ、何してもええんじゃ」。こりゃもう悪人そのもの。
役所広司が上手い。こうした汚れ役を迫力で演じている。
で、同じヤクザ映画の「アウトレイジ」と違うところは、日岡という、いわば観客の視点の代弁者のような人物を配したところ。
松坂演じるイケメンが、大上のあまりの常識破りにおどおどしながら必死に付いていく。
えっ、こんなことを本当にやってしまっていいの?という観客の気持ちを、日岡が代弁してくれる。
暴力描写も容赦なくある。
豚の○○を無理矢理食べさせる拷問や、***にはめ込んだ真珠を強引に取り出す復讐や・・・。
純情な青少年には見せたくない映画ではある。純情な気持ちの方も敬遠した方がいいかもしれない映画である。
脇役もよかった。
ピエール瀧(「アウトレイジ」でも頑張っていた)をはじめとするヤクザ連中も凄みを出していた。
江口洋介はヤクザを演じてもどこかクールで格好いい。
それにクラブのママ役の真木よう子が少し痩せたようで凄みを出していた。
(以下、ネタバレ)
物語が進んで、大上は非業な死を遂げる。
この映画がだれなかったのはここからの展開も大きい。
大上が実はヤクザの抗争を食い止めようと、汚れ役をあえておこなっていたという信条もあったというところ。
そしてその大上のヤクザとの癒着を調査するために県警本部から送り込まれていた日岡が、その大上に感化されて変貌していくところ。
かっての東映ヤクザ映画が好きだった方にはお勧めできる作品でした。