あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「カンウォンドのチカラ」 (1998年) あのとき、あそこへ行って・・・

1998年製作 109分 韓国 
監督:ホン・サンス
出演:オ・ユノン、 ペク・チョンハク

醒めた人間ドラマ。 ★★★

 

ホン・サンス監督の長編第2作。
タイトルのカンウォンド(江原道)というのは韓国の有名な観光地らしい。そして”チカラ”というのは”恋”という意味らしい。(映画公開時のタイトルは「カンウォンドの恋」だった。)

 

女子大生のイ・ジスク(オ・ユノン)は2人の友人と一緒に、江原道(カンウォンド)へと遊びにきた。
現地の若い警察官と知り合った彼女らは、夜更けまで飲み歩いたりする。
後日、再びその警察官に会うためにイ・ジスクは一人でカンウォンドを訪ねる。

 

同じとき、大学講師のチョ・サングォン(ペク・チョンハク)も、後輩と一緒にカンウォンドを訪れていた。
実は、彼と教え子のジスクとは別れたばかりの恋人関係だったのだ。

 

同じときに同じ場所を訪れていながら、出会わない元恋人同士のジスクとサングォン。
うわべは似ているような出来事が起こるのだが、関わる人の心理が異なるために微妙に違う出来事のようにみえてくる。
同じ出来事に異なる意味を持たせたような2部形式の物語と捉えることもできる。

 

二人がそれぞれ訪れていたとき、カンウォンドでは観光旅行に来ていた夫婦の一人が転落死をするという事件が起こる。
単なる事故なのか、それとも殺人事件なのか。
二人はそれぞれ、谷川に架かった吊り橋の上で夫婦とすれ違ったり、バス乗り場にやってきた夫婦の一人と会ったりしている。
それらが、淡々と映像であらわされる。

 

ジスクは自分勝手なのだか無邪気なのだか、よく判らない行動をとる。
しかし妙にリアリティがある。
一方のサングォンは必死に教授になろうと画策したりしている。
俗人らしい器の小さい人物像もよく伝わってくる。

 

ホン・サンス監督の映画は初めて観た。
彼はロベール・ブレッソン監督に多くの影響を受けたとのこと。
そのためか、登場人物はみんな少し冷めたような雰囲気である。感情の発露は抑えられていて、淡々と行動する。
説明もしないため、登場人物の心理状態がよくつかめないところがいくらでもある。
それがホン・サンス監督の持ち味なのだろう。

 

気持ちが高揚するようなところは全くない作品。
しかし、どこか生ぬるい湯につかっているけだるさと心地よさも感じられる。
何か癖になりそうな、そんなものがあった。