あきりんの映画生活

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「ハント」 (2022年) 「北」のスパイは誰だ?

2022年 125分 韓国 
監督:イ・ジョンジェ
出演:チョン・ウソン、 イ・ジョンジェ

諜報ものサスペンス。 ★★★☆

 

時代は1980年代の韓国。
このころ韓国には安全企画部(旧KCIA)という組織があって、海外担当の班、国内担当の班がそれぞれ暗躍していたようだ。
冒頭で機密情報が「北」に漏れたことが判る。安全企画部内にスパイがいるぞ。

 

安全企画部の海外班長パク(イ・ジョンジェ)と、国内班長キム(チョン・ウソン)は、それぞれの部下と共に捜査を開始する。
「北」のスパイは誰だ? そいつを見つけることができないお前こそがスパイなのではないのか?
パクとキムは互いを疑い、相手の動向を監視するようになる。

 

冒頭のあたりはかなり混乱した。
パクやらキムやら、チャン、チョといった名が次々に出てきて、しかも韓国の俳優には疎いので顔の見分けが付かない。
あれ、これは誰だっけ? どっちの立場の人だっけ?

 

おまけに、この映画は描かれた時代の韓国の情勢をある程度知っていないと、さらに混乱する。
光州事件て何?という状態では、あれ、これはどういうことだったんだ? ということになる。

 

1979年に全斗煥は軍の実権を掌握して軍事クーデターを起こす。
それに反発した学生・市民が軍事政権に民主化要求をしたのが1980年の光州事件である。
一時は20万人にまで増えたデモ隊に向けて軍・機動隊は一斉射撃をしたりして、多数の死傷者が出た。
この映画の時代は、そんな事件によって築かれた軍部独裁政治だったのだ。
(名前こそ出ないものの、当時の全斗煥はまるで北朝鮮の”将軍様”のような地位にいたようだ)

 

中盤までは、海外班長パクと国内班長のキムのスパイ捜しのサスペンスものとなっている。
誰も信用するな、といったぎすぎすした緊迫感が充満していた。
そしてスパイの正体が明らかになる。お前だったのか・・・。

 

これで一件落着か。いやいや。
この映画の特筆する部分は、スパイの正体が明らかになった後の物語である。
歴史的にも全斗煥大統領はビルマ北朝鮮工作員の爆弾テロによる暗殺計画にあっている。
そういった史実も巧みに取り入れて、パクとキムの緊迫したやりとりが続くのである。

 

自国の暗黒歴史(といってもいいように個人的には思うのだが)までも映画に取り入れてしまう韓国映画のやる気には感嘆する。
邦画ではちょっと真似ができない部分もある。

 

クライマックスは、それこそ息をするのを忘れてしまいそうになるほどに緊迫した場面が続く。
お前、どうするんだ? そちらこそどうするんだ?

お勧め映画です。