2023年 日本 120分
監督:タカハタ秀太
出演:二宮和也、 波瑠
純愛もの。 ★★☆
元ジャニーズでご贔屓と言えば、岡田准一と、もう一人は二宮和也(ニノ)。
ということで、ちょっとベタかもしれないなと危惧しつつ鑑賞。
原作はビートたけしの同名小説(未読)。
手作りや手書きにこだわる建築デザイナーの水島悟(二宮和也)は、自身が内装を手がけた喫茶店「ピアノ」で美春みゆき(波瑠)と出会う。
感性に似たものを感じた悟は、謎めいたところのあるみゆきに惹かれていく。
彼女に連絡先を尋ねたのだが、なんと、彼女は携帯電話を持っていなかった。えっ?
そこで2人は毎週木曜日に「ピアノ」で会う約束を交わす。
ポケットベルがあらわれて、携帯電話があらわれて、いまやスマホを誰でもが持っている時代。
約束や予定が変更になれば、すぐに連絡を取って伝えることができる。
でも、昔は違ったのだよ。
ほら、あの名作「東京ラブストーリー」でも連絡の取れないカンチをリカはずっと待ち続けていたんだよ。切なかったのだよ。
この映画の二人も、約束の日の「ピアノ」で会わない限りは連絡が取れない。
今日はあの人は来るだろうか、何か都合が付かなくて来られないだろうか・・・。
このもどかしさが純愛の雰囲気を盛り上げる。
会えた日の喜びもひとしお増すというもの。
ニノは(いつも通りの)自然体で好い。
演技をしていても、それを自然体と思わせるところが上手い証拠なのだろう。
波瑠は「ホテル・ローヤル」や「弥生・三月」で観た女優さん。
たたずまいに少し硬い感じがあり、この映画でもその雰囲気はよく合っていた。
さて、二人は会える時間を大切にしていろいろなところでデートをする。
浜辺でのデートの日、悟は糸電話で遊んでいるときに、みゆきにプロポーズの言葉を伝える。
しかし糸電話の糸が長く、波の音もあって、みゆきには聞こえなかったようだった。
せっかく思いを伝えたのに、もどかしいなあ。
悟を囲む脇役が好い。
昔からの親友2人組や、「ピアノ」のマスター(リリー・フランキー)。悟の恋を応援する彼らが映画を暖かいものにしている。
ついに意を決して婚約指輪を買って「ピアノ」でみゆきを待つ悟。
しかし、その日みゆきはあらわれず、それからもみゆきが「ピアノ」に来ることはなかったのだ。
なぜ? 彼女に何があった?
(以下、ネタバレ)
大事な待ち合わせの日に、相手が事故に遭って連絡不通となる、という展開は「イルマーレ」を思い出してしまった。
そのことを伝える手段もなくて、後日になってそのことを知った主人公が・・・という展開も似ていた。
波瑠の日記を悟が読む場面がある。
映画は悟の側から描かれていたのだが、あのときにみゆきは実はこんな風に思っていたのだよ、と伝えてきて、過ぎてしまった時がより一層切なくなる。
あの浜辺での糸電話も、実はみゆきにはちゃんと聞こえていたのだ。
記憶も失い、何も判らなくなっている波留に毎日会いに来る悟。
これからは毎日が木曜日だよ。・・・泣けるなあ。
やはりかなりベタな作品ではあった。
しかし出演者はみんな好い感じで(この映画には悪人は一人も出てこない)、かすかな希望を伝える最後もほのぼのとしていた。
優しい気持ちになることができる作品でした。あなたもスマホを使わないようにしてみる?