あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「パリタクシー」 (2022年) 次はあそこに寄ってくれないかしら

2022年 91分 フランス 
監督:クリスチャン・カリオン
出演:ダニー・ブーン、 リーヌ・ルノー

街中ドライブのロード・ムービー。 ★★★☆

 

パリでタクシー運転手をしているシャルル(ダニー・ブーン)。
思うような稼ぎは出来ず、ほとんど休みなし、しかも細かい違反が重なって免停スレスレ。
くそ、どうすりゃいいんだ、と、愛する妻の手前もあり不機嫌、無愛想。
ま、そうだよな。

 

そんな彼に長距離の仕事依頼が来る。
パリの地形には疎いのでよく判らないのだが、街の反対側まで行くことになるらしい。
そんな遠いところ嫌だよ。そこから迎車のメーターを倒してもよいから行ってちょうだい。
迎えに行った古いお屋敷の前で乗せたのが92歳の上品な老婦人マドレーヌ(リーヌ・ルノー)。
身寄りのない彼女は終の棲家である養護施設に移るところだったのだ。

 

車の運転手と乗客の老婦人の交流といえば、あの良品「ドライビング・ミス・デイジー」があった。
あちらは年余に渡る交流ものだったが、今作は1日限りの交流。
しかしその1日の間に二人の間にしみじみとした心の通い合いが生じるのだ。

 

はじめは話し好きなマドレーヌにシャルルはいささかうんざり気味。
もう今日が最後だからと、マドレーヌはいろいろなところへの寄り道を依頼してくる。
もう面倒くさいなあ、お抱え運転手じゃないんだぞ、次はどこへ寄れって言うんだ・・・。

 

不機嫌・無愛想なシャルルにはおかまいなしにマドレーヌはこれまでの自分の人生をぽつりぽつりと話す。
まだ10代だった頃の甘酸っぱい初めてのキスの思い出、その相手の彼はパリ解放にやって来たアメリカ軍兵士で間もなく別れたこと、そして既に身ごもっていたマドレーヌは子供を産んだこと・・・。
次第にマドレーヌの話に引き込まれていくシャルル。彼の態度、表情も柔らかくなっていく。

 

今は静かに老成したマドレーヌだが、これまでの人生には大変な物語があったのだ。
幼い息子を連れての結婚生活は悲惨だったのだ。モラハラ夫のDVも繰り返されたのだ。
自分と息子を守るために彼女がとった行動は・・・。
そして女性の権利などがまだ認められていなかった社会情勢の中で、そんな彼女の行為にくだされた判断は・・・。

 

マドレーヌが言う、「怒ると一つ年を取り、笑うと一つ若くなるわよ」。なるほど。
マドレーヌ役のリーヌ・ルノーは本業はレジェンド歌手らしい。
フランスでの原題は「美しい道のり」というらしい。英語では「マドレーヌのパリ」だった。邦題は何の工夫もなく、今ひとつ。

 

途中の公園で一緒に飲み物を楽しむようになった二人。
後部座席から助手席へと座る位置も変えたマドレーヌ。
向かうはずだった養護施設からはまだ到着されないのですか、と催促の電話が入ったりもしたのだが、長い一日が終わる前に、二人はレストランでゆっくりと食事をとる。

 

そして養護施設の前で別れようとしてマドレーヌが言う、まだ料金を支払っていなかったわ。
シャルルが答える、また会いに来るからそのときに払ってもらうよ。

 

そのあと、二人はどうなったのか・・・。
1時間半のそれほど長くない作品ですが、ほっこりとしますよ。お勧め作品です。
(それにしても、邦題が好くないよなあ)