あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「メトロで恋して」 (2004年) 貴方ならどうしていた?

2004年 90分 フランス 
監督:アルノー・ヴィアール
出演:ジュリアン・ボワスリエ、 ジュリー・ガイエ

若者の恋物語。 ★★☆

 

まだ初々しい、まだ未熟な、それだけに夢も希望も大きい(はずの)若者(といっても30歳前後の二人だが)の恋物語
残酷な運命が立ちはだかった時に、貴方ならどうしていた?

 

舞台はパリ。お洒落な恋の街パリ。
芽が出ないでいる俳優のアントワーヌ(ジュリアン・ボワスリエ)と、鉄道のウェイトレスをしているクララ(ジュリー・ガイエ)は、地下鉄で偶然に出会う。
アントワーヌはメモ用紙に、これからお茶しない?と書いて誘う。
クララは、貴方は話せないの?と返事を書く。
今わね、とアントワーヌが書いたメモ用紙に、クララは電話番号を書いて地下鉄から降りていく。

 

なんとも微笑ましい恋の始まりである。クララ役の女優さんも可愛いし。
調べてみると、パトリス・ルコント監督の「ぼくの大切な友だち」に出ていた(主人公と、大切な友だちがいるかどうかの賭をする相手だった)。
一時は当時のフランス大統領との不倫疑惑もあった女優さんのようだ。へぇ~。

 

さて。
再会した二人は親密な関係となり、結婚を考えるようになる。
しかし軽い気持ちで受けた健康診断でクララはHIV陽性であることがわかる。

 

さあ、この映画はここからだ。
思ってもいなかったHIV感染で嘆き悲しむクララ。無理もない。
彼女を支えてやれるのは恋人のアントワーヌだけ、なのだが・・・。

 

しかし、アントワーヌはクララの感染の事実が受け入れられないのだ。クララを遠ざけるようになってしまったのだ。
AIDSは死に至る病、そしてHIV感染はいずれはAIDSを発症する状態、しかも他人にもその感染を起こす可能性がある状態・・・。
2人の間には途端に距離ができてしまう。

 

この映画が作られたのは20年前である。
1990年代にはAIDSは死に至る病であり、HIV感染はそのままAIDS発症に結びついていた。
2000年代に入り、やっとHIVを沈静化する薬剤が登場し、HIV感染症は生存しうる状態となった。
この映画が作られた時代はその過渡的な状況だったのだ。
さあ、貴方はアントワーヌを責めることが出来るか?

 

クララを愛していたアントワーヌも苦しんでいたのだ。
そして6年の月日が流れるのである。
クララの苦しみを受け入れたいと考えるようになったアントワーヌ。
一方で新しい生活をアルゼンチンで始めようとしていたクララ。

 

友人達がひらいてくれたクララの送別パーティーの最中にアントワーヌは彼女を訪ねる。
そして部屋の外へ呼び出した彼女に、もう一度一緒に暮らしたいと申し出る・・・。

 

最後の場面、パーティーの部屋へ戻ったクララは、立ち去っていくアントワーヌを窓から見ていたのだ。

 

何が正しくて、誰が誤っているか、などということを突きつけてくるわけではない。
ただ、こういった判断/選択をした若いカップルがいた、という映画だった。
甘いタイトルの邦題とはうらはらに、苦い後味が残る青春映画だった。
(ちなみに原題は「クララと私」といったところ)