2024年 148分 アメリカ
監督:ジョージ・ミラー
出演:アニヤ・テイラー・ジョイ、 クリス・ヘムズワース、 トム・バーク
荒廃した近未来もの。 ★★★
私はメル・ギブソン主演の「マッド・マックス」シリーズは観たことがなかった。
どうせ薄汚い野蛮な連中が改造バイクで暴れる映画だろうと思っていたのだ。
なので、2015年の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観た時は驚いた。
確かに改造バイクで砂漠を突っ走るだけの映画だったが、その造形は想像の遙か上をいっていた。
こりゃ、すごい世界観だな。
そしてあの映画で主役のトム・ハーディを完全に食っていたのは、シャーリーズ・セロン演じるフュリオサだった。
坊主頭で片手は義手。おまけに顔半分をグリースで黒く塗っている。異様な美しさだった。
さすがセロン姐さん、決めてくれるねえ。
さて今作はそのフュリオサの前日譚で、少女時代からの彼女が描かれる。
成人してからのフュリオサ役はアニヤ・テイラー・ジョイ。
特徴的な目力があって、たしか「アムステルダム」で初めて観たのだったが、脇役ながら大変に印象に残った女優さんだった。
そうか、彼女がヒロインか。シャロン姐さんに対抗できるかな?
銃の名手だった母を殺された少女フュリオサは、バイカー軍団を率いるディメンタス(クリス・ヘムズワース」に檻に閉じ込められて育てられる。
やがてディメンタスは、要塞にたてこもるイモータン・ジョー一味と覇権を争うことになる。
世界が崩壊して、水やガソリン、食糧が乏しい荒れ果てた世界という設定はこれまでの系譜どおり。
そしてこのシリーズの特筆すべきものは、なんといっても改造バイク。
「怒りのデスロード」ではその奇妙で荒々しい造形美に魅せられたものだった。
今作ではディメンタスが乗る二台横つなぎバイクが面白かった。あれは古代ローマあたりの戦車のイメージなのだろうな。
前作でフュリオサの憎々しい敵だったイモータン・ジョーだが、今作ではよりいけ好かないディメンタスに比べると随分とまともな奴に思えてきた。
それだけディメンタスがゲス野郎だったということか。
フュリオサが片手を失った経緯も描かれていた。なるほど、そうだったのか。
前作も今作も物語は言ってみればあってないようなもの。
特異な世界観と、バイクやメイク(髑髏のお面とか白塗りボーイなど、ね)などの特異な美意識を見せるための映画だった。
そういった意味では、この映画で物語の出来を云々するのはあまり本質的なことではないと思える。
しかしそれだけに、前作で魅せられた特異な世界風景のインパクトが弱まっているのは否めなかった。
ということで私の評価は前作よりは少し低いものとなった。
これ、セロン姐さんとアニヤ・テイラー・ジョイの貫禄の差もある?