あきりんの映画生活

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「シビル・ウォー」 (2024年) 戦場カメラマンが見たアメリカの内戦

2024年 109分 アメリカ 
監督:アレックス・ガーランド
出演:キルスティン・ダンスト、 ヴァグネル・モウラ、 ケイリー・スピーニー

ただのエンタメではない真面目な映画。 ★★★

 

副題は「アメリカ最後の日」。
アメリカで勃発した内戦を、その写真を撮ろうとする戦場カメラマンの目を通して描いている。
映画としては、戦争アクションものであり、またワシントンD.C.に向かう4人のロードムービーでもあり、若い戦場カメラマンの成長譚でもあった。

 

リー・スミスキルスティン・ダンスト)はベテランの戦場カメラマン。
内戦の過激な戦闘シーンを撮していく。
カメラマンなどのジャーナリストは戦場では戦闘員とは区別され、ある程度は守ってもらえる。
しかし、戦闘現場が危険であることに変わりはない。
自分の命を危険にさらしてまで、戦場カメラマンはただ記録を撮り続ける。

 

混乱の中でデモに巻き込まれた若いカメラマンのジェシーケイリー・スピーニー)がいた。
リーはジェシーを助け、その後、彼女たちはワシントンD.C.へ大統領のインタビューをおこないに出かけることになる。
同行するのは同僚のジョエルや同業者のサミー。
4人は車で千数百キロの旅に出る。

 

正直なところ、タイトルからはもっとお気楽な、戦争アクション一辺倒のものかと思っていた。
違った。かなり気分が沈みこんでいくような、社会問題を抱えたものだった。
シビルウォーは内戦ということであり、定冠詞が付くと南北戦争を指すとのこと)

 

カリフォルニア州テキサス州が独立軍を結成し、政府軍と戦っているようなのだ。
内戦が始まった理由などは一切説明されない。とにかく内戦が始まっているという状況に観ている者も引きずり込まれる。
そして政府軍は劣勢で、ホワイトハウスにいる大統領も危ういようなのだ。そんな大統領のコメントをとり、姿を撮りたいと4人はワシントンD.C.へ向かっている。

 

映画の中で、アメリカは戦争中毒だ、という台詞があった。
これまで他国で戦争を繰り返していたアメリカがついには自国で内戦を始めてしまったという皮肉のようでもある。
戦争を起こす理由は重要ではなく、とにかく戦争を続けていたいのさ、とでも言いたげ。すごいね。

 

4人が旅の途中で遭遇する戦闘シーンの臨場感は凄まじい。
そんな現場を、はじめは葛藤を見せていたジェシーも次第に冷徹に撮り始める。

 

彼女たちのような戦場カメラマンは当然だが非戦闘員である。だから戦闘しているどちらの側にも属しないという原則である。
だからこそ彼女らはどちらからも直接狙われることはないわけだ。
しかしそれは、死にそうな人が目の前にいても助けずにシャッターを切るということでもある。もし助ければ、どちらかに加担することになる。そうすればその敵側には殺されても仕方ないのだ。

 

これは頭ではよくわかることである。報道は中立性が大事なのだ。
しかし、命の危険にさらされた人が眼前にいたら・・・と、倫理的には割り切れないものが残ることも確かだ。

 

旅の途中で4人は反乱軍に捕らえられる。
おまえは何者だ?との誰何への答えで情け容赦なく撃ち殺されたりもする。
この場面は実に怖い。人間の狂気があらわされていた。
(余談;この反乱軍の狂気の兵士はキルスティン・ダンストのご主人だったとのこと。迫真の怖さだった。)

 

最後、やっとのことで3人は(一人は途中で亡くなる)ホワイトハウスへ到着する。反乱軍が突入するまさにそのときだった。
大統領はどうなった?
そしてその場に居合わせたリーとジェシーはどうした?

 

戦争の狂気、そしてそれを報道するということはどんなことか、そんなこを考えさせる作品だった。