あきりんの映画生活

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インファナル・アフェア (2002年) *改訂版*

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2002年 香港 102分
監督:アンドリュー・ラウ
出演:アンディ・ラウ、 トニー・レオン、 アンソニー・ウォン

香港ノワールの新しい時代を作った映画。 ★★★★

もう一度観なおしても、全編に漂う緊迫感と、特殊な状況に置かれた主役二人の葛藤がひしひしと伝わってきて、やはり大した映画だ。

香港マフィアの一員であるラウ(アンディ・ラウ)は、ボスの命令を受けて警察へ潜入する。
一方、優秀な警察官であったヤン(トニー・レオン)は、警察学校を退学になったことにしてマフィアへの潜入を命じられる。
二人はそれぞれの組織で身分を偽わりながら、次第に重要なポストについていく。

ヤンは大がかりな麻薬取引の情報を警察に流す。
しかし、その情報を得て検挙網を張りめぐらす警察の動きもまた、ラウによってマフィア側に知らされる。
麻薬売買の連絡をとる携帯電話の周波数など、それぞれの情報が刻一刻と相手側に流されて、それぞれの陣営がそれによって作戦を練っていく。

自分が潜入者であることがバレルような情報は流せない。
しかし、相手に打撃は与えなくてはならない。その駆け引きが絶妙にすすんでいく。
盗聴マイクを通じてヤンがモールス信号で情報を警察へ流す場面は、お気に入りのシーンのひとつ。

自分を偽って行動している主役の二人の演技が素晴らしい。
あまりに演技が素晴らしいので、観ている方も、ええと、これはヤンだからマフィアなんだけれども本当は警察で、ええと、これはラウだから警察なんだけれども本当はマフィアで、と考えなければならない。ややこしい(笑)。

それにしても、ヤンもラウも、偽りの自分としての行為は、はたして本当に偽りなのだろうか。
もしかすれば、偽りだと思っている方がすでに本当の自分になっているのではないか、という疑念がつきまといはじめるのがわかる。

やがて、警察もマフィアも自分たちの中にスパイがいることに気づく。
皮肉にも、ヤンを信頼しているマフィアのボスは彼に誰がスパイなのか探しだせと命じる。成績が優秀なラウは、警察幹部から誰がスパイなのか探しだせと命じられる。
さらに、警察はこっそりとヤンに、マフィアはこっそりとラウに、誰が潜入しているのか情報を探れと連絡する。
ますますややこしいぞ(笑)。

マフィアのボスがラウとこっそりと会う場面がある。
ボスが会いに行く相手が警察に潜入しているスパイだと考えたヤンは、こっそりとボスの跡をつける。
そしてボスからの資料を受け取って立ち去るラウの後ろ姿を、ヤンが追う。緊迫する。いいなあ。

やがてヤンとラウが顔を合わせて大円団へとすすんでいく。
ビルの屋上で二人が対峙する場面は美しい。二人の頭上に広がる青空、これぞ男映画の美学である。

この二人を比べると、本質的に警官であるヤンはどこまでも直情的であるのに比して、どこかにマフィアの影を引きずっているラウは、善人になろうとするのにもどこか計算してところがある。
だから、生き残るのは・・・。

マーティン・スコセッシ監督がレオナルド・デカプリオとマット・デイモンを起用してリメイク「ディパーテッド」を作りたくなったのも容易に納得できる。
それほどに質の高い作品です。