2006年 アメリカ 132分
監督:マイケル・マン
出演:コリン・ファレル、 ジェイミー・フォックス、 コン・リー
潜入捜査もの。 ★★★☆
人気TVドラマの映画化とのことだったが、オリジナルの方はまったく知らないで映画を観る。
タイトルにある「バイス」とは警察の特捜課のことらしい。つまり、マイアミ警察特捜課の二人の刑事の活躍を描いている。
クロケット(コリン・ファレル)とタブス(ジェイミー・フォックス)は、麻薬密輸の一大組織に潜入捜査をしようとする。
冒頭から説明はまったくなしで、物語がはじまる。
この主人公たちは何者? 何をしている? 何についての会話?
監督のマイケル・マンはTVドラマでの監督もやっていたので、いまさら説明なんてと思ったのかもしれないが、映画が初見の人には若干の戸惑いがあったぞ。
クロケットとタブスは麻薬の運び屋を装って組織のボスに接触しようとする。
そのボスのパートナーがコン・リー。
コン・リーの魅力は、どんな役をやっていても付いてくる、どこか薄幸を思わせる淋しげな風情にある。
この映画でも、せっかく手にした栄華(悪によって築きあげたのだが)を投げ打つような恋に身を投じていて、好かった。
突然の恋に落ちてしまった相手のコリン・ファレルとサルサ(?)を踊っているときのコン・リーの笑顔がいじらしかった。
この映画のときコン・リーは40歳である。
さすがに顔のアップになると初々しさは失われているが、それでもなお魅力的だった。
物語は起伏に富んでいて、終盤ではかなり派手な銃撃戦もあったりするのだが、全体の雰囲気は沈みがちに淡々としている(夜の場面も多いし)。
TVドラマの雰囲気がどんなものだったかは知らないのだが、もっと華やかな刑事ものを期待していた人にとっては不満が残るかもしれない。
海岸にはいつも強い風が吹き荒れているようで、男の髪も女の髪も乱れる。
マイアミが舞台なのだが、溢れるような色彩感はなく、どちらかと言えばモノトーンの感じである。何気に、地味。
そこが陰影感となっていて、個人的には好きな雰囲気になっていた。
この映画、本来は潜入捜査をする刑事の活躍がメインのはず。
しかし、私には対立する立場の二人、コン・リーとコリン・ファレルの”禁断の恋物語”の方がずっと印象的だった。
風の強い海沿いの小屋での夜明け、そして二人の別れ。
もう、メロ・ドラマとして観てしまったなあ。