2008年 アメリカ 167分
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ブラッド・ピット、 ケイト・ブランシェット
若がえっていく人生。 ★★★☆
スコット・フィッツジェラルドの短編小説を映画化したとのこと。
老人の容姿で生まれた主人公が、歳をとるにつれて肉体が若返っていきながらおくった一生を描いている。
物語は、主人公のベンジャミン(ブラッド・ピット)が巡りあった運命の女性デイジー(ケイト・ブランシェット)の回想(実際には彼女が持っていたベンジャミンの日記によるのだが)という形ですすむ。
回想という形は、甘酸っぱい形をとる。
それが死の床にある者の回想ならなおさらである。
後悔や、愛惜などが出来事の上に降り積もっているのだから。
時代の変遷を背景にした一人の人物の年代記であり、映画の全体的な感じは「フォレストガンプ・一期一会」を思わせる。
ただ、主人公が歳を取るにつれて若返っていくので、出逢う人たちとの交流が変わってくる。
愛する人とも、一緒に歳を取るということはできない。
普通は夫婦で一緒に歳を取っていくのだが、この物語では、片方は肉体的に老いていくし、片方は精神的に未熟になっていく。
ベンジャミンとデイジーの二人の人生の年齢がちょうど交差するのは10年間ぐらいのことだった。
その限られた時を一緒に過ごす二人の幸せそうな姿は、いずれ二人の肉体の状態が逆方向へ向かって行くことが判っているだけに、切ないものだった。
人が老いていくということは、どんなことなのか、それをどう考えたらよいのか、そんなことを問いかけてくるようだった。
大河ドラマを見終えたような充実感はある(時間も長かったし(笑))。
ただ、「フォレスト・ガンプ」の様な満足感があるかと言われると、ちょっと辛い。
単純なハッピー・エンドではないという理由ではなく、映画自体の狙い所がどうも中途半端だった気がする。
私の理解不足なのだろうが、疑問点が一つ。
ベンジャミンは老人の身体で生まれて、肉体的には若返っていくのだけれども、精神年齢は実年齢相当で発育していったのだよね?
とすると、歳を取った時には、子供の身体をした老人性認知症になっていったんだよね?
なんだか映画では精神的にも幼児化していったような感じで描かれていて、そこがどうにも違和感だった。
タイトル通りに”数奇な”設定は面白い。
しかし、その設定から見えてくるものがあまり感じられなかった。
奇才のデヴィッド・フィンチャーは好きな監督の一人。彼ならもう少し行って欲しかったなあ。