あきりんの映画生活

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「恋する惑星」 (1994年)

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1994年 香港 101分
監督:ウォン・カーウァイ
出演:トニー・レオン、 フェイ・ウォン、 金城武、 ブリジット・リン

お洒落な恋愛映画。 ★★★★★

香港の雑多な喧噪のなかでの2つの恋愛物語が映しだされる。
前半は金城武とブリジット・リン、後半がトニー・レオンフェイ・ウォンの物語。
この2つの話は舞台が同じというだけで関連がなく、トニーレオン金城武も警官をしているという共通ごとがあるだけで、一度も出会っていなかったはず。
(もちろん、お互いの策略を探り合うような琴演奏のバトルをしたりする場面はありません(笑)。)

青みがかった画面の中に、ネオンサインの赤や黄色の原色がにじむ。
コマ落としで撮られた画面に、動く人々がぼやける。
なんて美しい映画なのだろうと感嘆する。

そしてその画面にかぶさるインド音楽のような曲、主人公たちのちょっと不思議な、しかし思いが込められたモノローグ。
「そのとき、彼女との距離は0.5ミリ、57時間後、僕は彼女に恋をした」
失恋したばかりの警官223号(金城武)は、麻薬運び手配師の女(ブリジット・リン)と出会う。

失恋した金城武は賞味期限が自分の誕生日で切れるパイナップル缶詰を買いあさり、ひたすら食べている。
彼のポケットベルの暗唱名は「1万年後も愛す」なのだが(携帯電話なんてものはまだありません)、
「記憶に賞味期限がないといい。あったとしても1万年後。」
なんて格好良い台詞なんだ!

そんな金城武はカウンター飲食店の店員フェイ(フェイ・ウォン)とすれ違う。
「そのとき、彼女との距離は0.1ミリ、6時間後、彼女は別の男に恋をした」

警官633号(トニー・レオン)に片思いをしたフェイ・ウォンはストーカーまがいの行為をする。
ひょんなことから手に入れたトニーの部屋の合い鍵を使っては留守中に忍び込み、部屋の模様替えをしてしまう。
ベッドカバーも変えるし、いろいろな小物も変えていく。でもトニーが部屋の中の装飾が変わっていることを変に思わないところが可笑しい。
新しくなった石けんに、しばらく見ないうちにお前は太ったな、と話しかけている。可笑しい。

後半にはママス&パパスの「夢のカリフォルニア」が幾度となく流れる。
そしてトニーにちょっかいを出し続けたフェイは待ち合わせをしたカフェ「カリフォルニア」にはあらわれず、本当に夢のカリフォルニアへ旅立ってしまう。

展開される物語、それを写しとる画面の色彩、そこに流れる音楽、それらのすべてが美しい。
初めて観たときに、なんて美しい映画なのだろうと感嘆した。

この映画にぞっこん惚れ込んだタランティーノ監督は、「格好いいとはこういうことさ」と評したそうです。
つづけて作られたカーウァイ監督の「天使の涙」もお勧めです。