あきりんの映画生活

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「裏窓」 (1954年)

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1954年 アメリカ 113分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェームズ・スチュアート、 グレイス・ケリー

サスペンスものの傑作。 ★★★

あまりにも有名なこの作品の面白さは、とにかく足を骨折して動けない主人公の不自由さ、それゆえの限られた情報、それを補う想像力の推理のわくわく感、である。
映画を観ている者も、主人公のジェフ(ジェームズ・スチュワート)と同じものしか見ることができない。
だから、観客もジェフの推理を一緒に楽しむことになるわけだ。

当然のことながら、映しだされるのは、全編、ジェフの部屋内とその窓から見える光景だけ。
それでこれだけの面白い映画を作るのだから、やはり大したもの。

導入部では、裏窓から見える住人達の生活ぶりを映しだす。
一人暮らしのオールド・ミス、暑いのでベランダで寝ている夫婦、引っ越してきたばかりの新婚夫婦、窓を開け放して平気で着替えをするバレーダンサー、傑作を作っている作曲家、奇妙なオブジェを作成しているおばちゃん芸術家・・・。
そこに暮らしている人間を感じさせる。さすがである。

動けないジェフの代わりに活躍する婚約者のリザ(グレース・ケリー)と、通いの看護婦(セルマ・リッター)が、それぞれに魅力的だった。
それにしても、リザのような美女にあれだけ言い寄られて、何故ジェフは煮え切らないんだ? 男の風上にも置いておけない野郎だ。

動きの少ない展開の映画だが、最後近くになってリザの大冒険がはじまる。
ジェフは動けないので、リザの窮地をただ眺めているしかできない。その緊張感が巧い。
見ている者も同じように緊張させられてしまう。
そしてカメラのズームレンズの中で追っていた犯人がこちらに気づき、レンズの中で目が合う。こわい場面ですなあ。
そして、誰かがジェフの部屋のドアをノックする。もう、たまりませんなあ。

ただひとつの不満は、裏窓から見えていた犯人以外の人々の生活が、それほど事件とはからんでこなかったところ。
事件は、それらのさまざまな人間模様の中のひとつでしかなかったというとらえ方。
でも、それがヒッチコック流の人生のとらえ方だったのだろうか。

最後の場面、冒頭と同じようにジェフのギブスを巻かれた足が映されるのだが、そのユーモア感覚に思わずにっこり。