あきりんの映画生活

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「ヘイトフル・エイト」 (2015年)

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2015年 アメリカ 168分
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:サミュエル・L・ジャクソン、 カート・ラッセル、 ジェニファー・ジェイソン・リー

山荘の密室サスペンス。 ★★★★

”荒野の七人” ならぬ”悪党の8人”。
大雪で山荘に閉じ込められた悪党の男女8人が、賞金首の女悪党をめぐって騙したり、騙されたり。

時代は南北戦争後のワイオミング。ということは、アメリカの北西部だな。
前半の舞台は、雪の中を走る1台の駅馬車
乗客は賞金稼ぎのルース(カート・ラッセル)と手錠をはめられた賞金首の女ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー)。
そこへ、元騎兵隊の賞金稼ぎウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)が乗り込んでくる。
するとそこに、新任保安官だというマニックスも合流してくる。
一行は猛吹雪を避け、道中にあるミニーの店に立ち寄ることにする。

3時間近い長尺で、半分ほどは駅馬車や山小屋での会話劇が続く。
それでもまったく退屈させないところは、タランティーノらしい会話劇の面白さ故。

駅馬車の中でも4人のあーだ、こーだという与太話が続く。
ここで異彩を放っているのが賞金首のドメルグ。
まあ、悪女らしいふてぶてしさが好い。
彼女を捕まえたルースも、賞金首は生死を問わず、ということになっていたのだが、町で縛り首にするために生かしたまま町へ連れて行こうとしている。

雪の中のミニーの店には見知らぬメキシコ人のボブが店番をしていた。
そして店には絞首刑執行人のモブレー、カウボーイのゲージ、南軍の元将軍スミザーズがいた。
これで8人の顔ぶれが揃ったぞ。
実はもう一人、駅馬車の御者がいるのだが、彼は悪党ではないので、”ヘイトフル・エイト”の一員ではないのだろう。

こうして、今度は雪に閉じ込められた店内での会話劇が続く。
タランティーノにはマイノリティに対する何か思うところがあるのだろうか。
彼の映画では、黒人問題やユダヤ人問題が、大なり小なり絡んでくることが多い。
この作品でもサミュエル・L・ジャクソン演じる黒人少佐の存在が会話劇の大きな核を成していた。

とにもかくにも、登場人物は癖のある悪人ばかり。
南軍の元将軍は黒人捕虜を殺したことを自慢するわ、北軍の将校はその将軍の息子に酷い仕打ちをしているわ。
手錠をかけられたドメルカは情け容赦なくぶん殴られるわ、保安官は黒人を侮蔑するわ・・・。

(以下、ネタバレ気味)

その間に、あっ、誰かがコーヒーのポットに毒を入れたぞ(この場面は手だけが映る)。
そしてそれをじっと見つめているのは賞金首のドメルグ。
そうなのだ、この中の誰かはドメルグを奪還しようとしてやって来た彼女の仲間なのだ。

誰が嘘をついている?
誰が次に殺される?
信じてもいいのは誰だ?

あっというまに血の惨劇。悪人たちはどうなった?
おお、最後の最後に生き残った悪人たちはこんな事をするのか。う~む、後味の悪さがあるのだが、ここまでやられるとかえって潔いか。

ということで、駅馬車と店内だけが舞台の映画。
しかし、緊張感はとぎれることなく、面白い。
タランティーノ自身も「これは俺の最高傑作だろう」と言ったとのことでした。