2014年 デンマーク 102分
監督:スザンネ・ビア
出演:ニコライ・コスター・ワルドー、 マリア・ボネビー
子供をめぐるサスペンス風味のドラマ。 ★★★☆
善良な刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター・ワルドー)は、美しい妻アナと生まれたばかりの愛児と、忙しいながらも幸せな日々だった。
しかしある日、愛児が突然死をしてしまう。
半狂乱になって嘆く妻。
このままでは彼女は自殺もしかねない、どうすればいいんだ。
アンドレアは薬物依存の夫婦に育児放棄された乳児が、クローゼットの中に糞尿まみれで放置されていたことを思い出す。
法律の壁に阻まれ、その乳児を保護することもできなかったのだ。
あの乳児にとって、誰が育てるのが一番幸せなことになるのか・・・?
いっそうのこと・・・。
予告編でも流れていたことのなので、書いてしまうが、アンドレアは亡くなった自分の子供と育児放棄されていた子供を取りかえてしまうのである。
この子を自分たちで育てよう、その方がこの子も幸せになれる・・・。
法律なのか、正義なのか。
それに、はたしてこれは正義なのか? 誰にとっての? 難しい問題である。
異なる切り口で同じようなテーマを扱っていたのが、ベン・アフレック監督の「ゴーン・ベイビー・ゴーン」だった。
あちらも良い出来の映画だった。
亡くなったわが子の代わりの子を手に入れたアナは、それからどうしたか?
代わりの子は、本当に代わりとなることができたのか。
一方で赤ん坊の育児放棄をして非道な母親だと思われていた実の母親サネ。
しかし実はそうではなかった。彼女もまた自分の子を愛していたのだ。
(以下、若干ネタバレ気味)
一人の父親は子供を取りかえ、もう一人の父親は自分が罪にとらわれることを恐れて子供の亡骸を埋めてしまう。
一方、一人の母親は他人の子供を慈しんでも自分の子供の代替えにならないことを感じ、もう一人の母親は取りかえられた子供が自分の子ではないことを本能的に感じて叫びつづける。
男親と女親の違いがどちらの夫婦にもあった。
なるほどなあ。父性と母性はまったく違うのだなあ。
いつも微妙な心理の揺れを描いてくれるスザンネ・ビア監督。
本作も単純には割り切れないものを巧みに描いている。
(以下、ネタバレ)
アンドレアスが必死に探した我が子の遺体は森の中で遺棄されていた。
その遺体は鑑識に廻され、そこで意外な事実が判明する。えっ!
これにはやられた。そんなことが隠されていたのか・・・。
映画の最後に数年後の後日談が映る。
刑事も止めてスーパーで働いているアンドレアスは無邪気な一人の子供に出会う。
君の名は。?
この後日談で気持ちは少し救われた。好かったね。