1973年 アメリカ 118分
監督:シドニー・ポラック
出演:バーバラ・ストレイザンド、 ロバート・レッドフォード
信条が異なる男女の恋愛物語。 ★★★
「追憶」といえば、なんといってもヒロインのバーバラ・ストレイザンドが歌った主題曲「The Way We Were」だろう。
もしかすれば、映画音楽だとは知らずに口ずさんでいる人もいるかもしれない。
映画は、1930年代後半からのある男女の20年に渡る愛と葛藤のドラマ。
二人が出会ったのは大学生のとき。
反戦運動に熱心で自分の信念に忠実なケイティ(バーブラ・ストライザンド)は、なぜか自分とは真逆のハベル(ロバート・レッドフォード)に惹かれる。
白いセーターとまぶしい太陽がよく似合う彼は、政治的信条よりもスポーツを愛する人気者だった。
この映画はバーバラ・ストレイザンドを受け入れられるかどうかで、評価が大きく変わると思う。
(鼻の大きな)彼女の風貌もそうだが、彼女が演じるケイィという女性は痛々しいぐらいに真っ直ぐなのだ。
私も以前に観たときはちょっと駄目だった。
しかし今回再見してみると、ヒロインのその心情がよく判ってしまった。愛するのは理性ではないのだな。
二人は大戦中にばったりと再会する。
ハベルは海軍仕官になっており(白い軍服姿が、また格好いい)、ケイティはそんな彼に作家としての才能を伸ばすことをアドバイスしたりして親しくなっていく。
なんと、ケイティは涙ぐましいほどの努力をしてハベルにアプローチしていくのだ。
この一途さが、”追憶”として振り返ったときに溜まらなく愛おしいのだ
恋人同士になっても、やはり二人はまったく考え方のスタイルが違う。
付き合う友人の種類もまったく違う。ハベルの友人たちの軽薄さがケイティには我慢ならなかったりする。
観ていて、この二人が上手くいくはずがない、ケイティが頑なすぎる、とたいていの人は思うのではないだろうか。
でも人を好きになるということは、人を愛するということは、理屈ではないのだな。
戦争が終わり、ハベルはケイティの勧めで作家となり、その映画化の脚本も書いていた。
しかし時代はハリウッドに赤狩りの波を立てていた(「ローマの休日」の脚本家トランポが共産主義者だということで迫害された映画は印象的だった)。
そんな中で、あいかわらず政治的信条にしたがって頑張るケイティの行動は、ハベルの仕事にまで影響を及ぼし始める。
好きなのに、どうしても上手くいかない二人。
この映画のポイントは、悲恋の原因が世俗的なことではなく、二人の生き方そのものの違いにあったこと。
シドニー・ポラック監督なので、ただの悲恋ものなんか撮らないわけだ。
別れを決めた二人。
でも、二人の赤ちゃんが生まれるときまでは傍に居て欲しい。うん、いいよ。
そして分かれて何年も経ったある日、ラストは・・・。
街かどでの二人の偶然の再会。ハベルに寄り添う奥さんに、ケイティは、きれいな方ね、と言うのだ。
好きだった懐かしい人との再会。そこへ流れるあの主題曲。
このラストは好いなあ。
別れざるを得なかったけれど、やはり今でも心に残っているものはあるのだ。
原題は主題歌と同じ「The Way We Were」。直訳すれば”私たちの歩んできた道”といったところか。
ベタな邦題の「追憶」も、この映画では活きていた。