あきりんの映画生活

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「#マンホール」 (2023年) マンホール女だよ、助けてくれよ

2023年 99分 日本 
監督:熊切和嘉
出演:中島裕翔

閉塞サスペンス。 ★★★

 

川村俊介(中島裕翔)は成績ナンバーワンのやり手営業マン。
しかも、社長令嬢との結婚を明日に控えていた。順風満帆、素晴らしいぞ、俺の未来。
しかし式の前夜、渋谷で開かれたパーティで酩酊した帰り道、マンホールの穴に落ちてしまった。えっ。

 

深夜になって川村は穴の底で目を覚ます。
そこは深い穴の中。取り付けられている鉄梯子は途中で壊れている。
しかも落ちたときに怪我をして足が思うように動かない。
えっ、こんな状況でどうすればいいんだ? どうやってここから出ればいいんだ?

 

ということで、言ってみればワンシチュエーション・サスペンス。
ものすごい低予算映画と思える。
なにしろ舞台の大部分はマンホールの中だけ。登場人物も一人だけ。
(最後にマンホールの外が映り、2人ほどの人物があらわれるが・・・)

 

しかし好くできている。
使える道具はライター(灯り、ね)、それとスマホだけ。
ここはどこだ? スマホの位置情報は渋谷の神仙4丁目あたりを差している。助けを呼ばなくては・・・。
玉の輿に乗る明日の結婚式までには何とかしなくては・・・。

 

警察に連絡するが、なかなかまともに取り合ってもらえない。
渋谷で蓋の開いているマンホールは発見できませんでした。あなたは本当にマンホールの中にいるのですか? 酔ってふざけているのではありませんか?

 

そしてこのあたりから川村の人間性が見えてくる。
相手に対して怒鳴り散らす、自分勝手な理屈ばかり言い始める、理不尽な要求ばかりする・・・。
なんだこいつ、共感できない奴だな。

 

友だちにも連絡を取ろうとするが、不在通知ばかり。
ただ一人連絡が取れたのは5年前にふった元カノだった。助けてくれ。
しかし、ここはどこなんだ? 渋谷じゃないのか?

 

ここで面白くなるのが、川村が「マンホール女」というアカウントをSNS上で立ち上げて、ネットで場所の特定と救出を求めるところ。
ネットでは「マンホール女」が大バズリとなり、次々と書き込みがされる。
真面目に推理する者もいれば、からかってくる者、自業自得だと罵倒してくる者、さまざま。

 

なんと雨が降りはじめる。
あれ、渋谷では雨は降っていませんよ。雨が降りはじめたのは北関東ですね。
おまけにマンホールに流れこむ排水溝からの汚水が不気味に泡を作り始める。その泡がマンホールの穴の中に一杯になってくる・・・。

 

こういった状況で、マンホールの中だけの映画なのだが、予想以上に面白い。
ただ、変化を付けようとしたからか、終盤にさしかかってから意外な展開を見せる。
この映画の惹き文句の警告は、「この結末、呟き厳禁」。なるほど。

 

ツッコみ所も少なくない。
(以下、ややネタバレ?)

 

スマホGPS位置情報、あれはどうやって偽情報が表示されるようにしたのだろう?
いつ、誰が細工した?
それに、そもそも川村を拉致してあのマンホールに落としたのは、誰だった?
最後に登場した人物の仕業にしてはどこかつじつまが合わないような気が・・・。

 

ということで、いささかとってつけたような大団円となっていく。
それでも充分に楽しめました。
ハードルは低めにして観ましょう。