2024年 123分 日本
監督:藤井道人
出演:シュー・グァンハン、 清原果耶
国を超えたラブ・ストーリー。 ★★☆
台湾人作家による紀行エッセイ「青春18×2 日本漫車流浪記」を映画化したとのこと。
台湾人青年とバックパッカーで台湾を訪れた日本人女性の恋が、二つの時代、二つの国を舞台に描かれる。
ピュアだよ。淡いよ。切ないよ。
18年前の台湾。高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)はカラオケ屋でアルバイトをしていた。
そこへやってきたバックパッカーのアミ(清原果耶)と出会う。
旅行資金を貯めるために働き始めたアミはたちまち周囲の人気者となる。
少し日本語が話せたジミーも、もちろん4歳年上のお姉さんアミに惹かれていく。
そりゃ、明るく屈託がないアミは好いよねえ。男の子だったら誰でも惹かれてしまうのではないだろうか。
でも、アミは人には言えないようなある事情も抱えていたのだ。
その事情から来る放浪の旅でもあったのだ。
台湾は親日的で、訪れて気持ちのよい国である。
私は台湾には4回ほど行ったことがあるが、そのうちこの映画の舞台となった台南には1回だけ。
明るいおだやかな国というイメージがある。
さて。仕事の合間にジミーはアミをバイクの後ろに乗せていろいろなところへ行く。
夜景が美しい山の上の展望台や、幻想的なランタン祭りにも行く。
そんな楽しい日々がいつまでも続くとジミーは思い込んでいたのだが、ある日、アミは突然日本に帰ると言い始める。
えっ、どうして?
そして18年後の現在。ジミーは36歳になっている。
ゲーム・プログラマーとして都会で一度は成功していたジミーだったが、仕事に挫折して帰郷してくる。
そしてかつてアミから届いていた葉書を手に取り、またいつか会おうね、というあの日の約束を守ろうと日本を訪れる。
前半の台湾での日々は二人の微笑ましいような交流場面だったが、後半の日本ではジミーの一人旅場面である。
ジミーは東京、鎌倉、長野、新潟などをめぐったあとにアミのふるさとである福島へ向かう。
その旅路で彼はいろいろな人と会う。
国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった、の放浪青年との出会いも好かったし、日本でのランタン祭りに連れていってくれたカラオケ屋の女性も好い人だった。
しかし、それにしてもジミーはどうしてすぐにアミに逢いに行かずにこんな回り道をしているのだろう、と思いながら観ていた。
(私が鈍いだけ?)
(以下、ネタバレ)
ついにジミーはアミの家を訪れる。そしてアミの母親から彼女の最期の様子を聞いたりする。
そうなのだ、アミは治療が困難な重い心臓病を抱えていたのだ。
生きている間にいろいろなところを見たいと、最初に訪れたのが台湾だったのだ。
そして急な帰国を決めたのも、ジミーのためにもっと生きたいという思いから拒否していた治療を受けるためだったのだ。
ベタな物語だなと思いながら観ていたのだが、このあたりで、あれ、目頭に滲んできたのはなんだ?
私ってこんなに純情おじさんだったのか?
かつての日に、アミは旅の目的を聞かれて、自分を確認するため、と答えていた。
日本でのジミーの一人旅も、アミがいなくなった世界での自分を確認しようということだったのだろうか。
純情な方におすすめの映画です。