1975年 フランス 108分
監督:ジャック・ドレー
出演:アラン・ドロン、 ジャン・ルイ・トランティニヤン
クローディーヌ・オージェ
アラン・ドロンの刑事もの。 ★★☆
このとき40歳のアラン・ドロンは、いよいよ渋くなっている。そんなドロンが実在した刑事に扮して、冷酷無比な凶悪犯を追跡する。
昇進を望んでいるフランス国際警察のボルニシュ(アラン・ドロン)は、脱獄した凶悪犯のビュイッソン(ジャン・ルイ・トランティニヤン)を捕らえようと、あらゆる手段を講じる。
そのためには、彼の仲間を脅しては裏切らせ、密告をさせる。いわば卑劣な手段も厭わない。
実話に基づいているのできれい事ばかりではすまされないわけだが、観ていて気持ちはすっきりしない。
一方のビュイッソンも誰彼の見境なく、邪魔になれば相手を殺してしまう。共感できるところがほとんどない殺人鬼である。
そんな二人の争いであるので、気持ちは暗い。
だから、登場人物には、「仁義」であるとか、「リスボン特急」であるとかで見せてくれた男気を感じさせる格好良さがなかった。そこが不満。
それを抜きにすれば、映画自体としてはよくできている。
トランティニヤンといえば、あのクロード・ルルーシュ監督の「男と女」でのイメージが強いが、ここでは無表情な殺人鬼を演じて、迫力を感じさせていた。
クライマックス、ビュイッソンが潜伏している郊外のレストランをつきとめたボルニシュが逮捕に出かける。
ビュイッソンを油断させるために、恋人のカトリーヌ(クロ-ディーヌ・オージェ)も連れて、他の刑事と一緒に普通のドライブ客を装う。
ここでボルニシュとビュイッソンは初めて顔を合わせるのだが、緊迫した展開はお見事。
カメラは美しい。パリの街並や郊外の田園風景など、これも今から観ればどこかノスタルジックな気持ちになるが、当時としてはとてもお洒落なカメラだったと思える。
音楽もよかった。クロード・ボランは、ドロンの映画では「ボルサリーノ」や「ル・ジタン」でも音楽を担当している。
この時代のフランス映画音楽特有の軽快な、それでいて哀愁を帯びたもの。サントラ盤が欲しくなるような佳曲である。
若い頃のドロンに感じられたリリシズムは薄くなっています。