2007年 アメリカ 101分
監督:マイク・ニコルズ
出演:トム・ハンクス、 フィリップ・シーモア・ホフマン、
ジュリア・ロバーツ、 エイミー・アダムス
コメディ風味もある政治もの。 ★★☆
主人公のチャーリー・ウィルソンというのは実在した人物で、アフガニスタンに侵攻して無差別殺戮をおこなっていたソ連を撤退させた人物である。
そのチャ-リー(トム・ハンクス)は、もともとはお酒と女性が大好きで、いけない薬もやってしまうというダメダメ下院議員。
しかし、ソ連の進攻に苦しむアフガニスタン情勢を気にして、アフガニスタン支援の予算を倍額にしたりもする人物だった。
そんな彼に、反共産主義者で大富豪のジョアン(ジュリア・ロバーツ)が目をつけて接近してくる。
この映画は、エンターテイメントとしてただ楽しんでみればよいのか、それとも社会問題を扱ったメッセージ性の高い映画とみるべきなのか、迷ってしまうところがある。
おそらくは、私がアフガニスタン問題とは直接の関わりを持たなかった日本という国に住んでいることが大きく関係しているのだろう。
アメリカ人が見た場合とは、受け取り方が全く異なっているのだろう。
米ソが対立する冷戦時代だったから、アフガニスタンを支援するといっても、表だってアメリカが動いていることが公になってはまずい。
冷や飯を食わされていたCIA局員(フィリップ・シーモア・ホフマン)と手を組んで、ソ連の戦闘ヘリを撃ち落とすスティンガー・ミサイルを供給して、それを扱う軍事訓練を助ける。
やがてそれが功を奏して、アフガニスタンの抵抗組織はソ連のヘリコプターや戦車を撃破するようになっていく。
眼も大きい、口も大きい、とにかく顔の造作が派手なジュリア・ロバーツが濃い感じで登場する。
こんなに美人で、ものすごい大金持ちで、それで共産主義大嫌いの極右とは。これも実在の人物をモデルにしているとのこと。すごい人物もいたものだ。
CIA局員を演じるフィリップ・シーモア・ホフマンには感心する。
最近作では「脳内ニューヨーク」の主演で観たけれども、同じ俳優とは思えないほどの別人物像を演じている。
フィリップ・シーモアは少しはずれた人物を演じて、いつも存在感を出している。大した役者だねえ。
映画はソ連がアフガニスタンから撤退していくところで終わる。
この時点まで、アメリカの(チャーリーの)とった行為には容認される部分が多くあったと言えるだろう。
しかし、歴史は皮肉である。
ソ連が撤退した後に、アフガニスタンに過激派が流れ込み、その後あの9.11テロ事件が起こる。そして、その報復と称して、タリバン政権を武力攻撃するために今度はアメリカがアフガニスタンに侵攻するのである。
この映画が封ぎられたのは2007年であるから、その後のアフガニスタン情勢については、マイク・ニコルズ監督も熟知の上で撮ったわけだ。
映画の表面上の物語としては、善悪(敵味方)は明確だし、チャーリーは憎めない人物像だし、面白く観ることができる。
しかし、物語の背景を考えると、ちょっと複雑な気持ちにもなってしまうのである。