あきりんの映画生活

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「奇人たちの晩餐会」 (1998年)

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1998年 フランス 80分
監督:フランシス・ヴェヴェー
出演:ジャック・ビルレ

フランス製おとぼけコメディ。 ★★★☆

タイトルからは、変人奇人が大勢集まったてんやわんやの晩餐会の物語かと思っていたのだが、まったく違った。
”奇人”は一人しか登場しないのである。
そして晩餐会なんて開催されないのである。
しかし、たった一人登場する奇人(作中では、奇人ではなく”バカ”と評されていた)がとてつもなく愉快なのである。

雑誌編集者のピエールは、バカな人物を晩餐会に招待しては、陰で友人たちと笑いものにするという悪趣味な遊びをしていた。
(なんと悪意に満ちた悪ふざけであることか。鼻持ちならないなあ。もちろん、ぎゃふんと言う目に遭うのですが。)
その夜、ピエールはマッチ棒工作に異常な熱意を持つピニョンを言葉巧みに家に招待する。
ところがピエールの奥さんはそんな陰険な遊びに愛想を尽かして家を出てしまう。おまけにピエールはギックリ腰になって満足に動けなくなってしまう。
晩餐会は中止となり、夜の更けていく家にはピエールとピニョンが取り残される。

これはまあ、なんという小粋な面白さ。
ほとんどがピエールの家の一室内で展開して、舞台劇のような展開を見せる(もともとが舞台劇?)。
この映画でのフランス人のユーモア感覚はまったく違和感がなかった。

この映画の面白さは、なんといってもピニョンの人物像である。
いやあ、本当に”バカ”なのである。と言うか。
本人はいたって大真面目。しかもとてつもなく他人事に興味津々。しかもとてつもないお節介好き。しかもとてつもないお人好し。

こういう人っているよなあ、と思わせる部分をかぎりなく誇張している。
逃げてしまった奥さんをなんとか連れ戻そうとするピエールに、善意のかたまりのようなピニョンが協力するのだが、よかれと思ってピニョンがすることはことごとく裏目に出る。
本人はいたって善良なのだが、(一途なバカなので)まるで疫病神。

もう帰ってくれ!と思わず何度も叫ぶピエール。
自分の行為が仇になってしょんぼり帰りかけようとするピニョンだが、あ、いいことを思いつきましたと、また戻ってくる。
で、ピニョンの思いつきを実行すると、事態はますます悪くなる・・・(笑)。
たまらんなあ(嬉)。

もともとは人をバカにして楽しもうとしたピエールと、悪気がなくただちょっと天然おっちょこちょいのピニョンと、本当はどちらが愚かな人間だったのかという風刺がぴりっと効いている。

このピニョンを演じたジャック・ヴィレルという人は「ピエロの赤い鼻」に出ていた人。
もう、その風貌からおかしさが漂ってきます。
セザール賞で主演男優賞や脚本賞をとっている作品です。