あきりんの映画生活

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「雪の轍」 (2014年)

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2014年 トルコ 196分
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン

会話劇。 ★★★☆

3時間越えの映画ということで、それなりの覚悟で見に行った。
しかし、その長さはまったく気にならなかった。
それだけ惹きつけるものが持続している映画だった。すごい。

舞台はトルコのカッパドキア
写真でお馴染みの、”妖精の煙突”と呼ばれる奇岩が林立する大地で、世界遺産にも登録されている。
主人公のアイドゥンはそこで親から受け継いだホテルを経営している(こんなところでホテル営業をしてもいいんだ!? 笑)

アイドゥンは若い妻、そして離婚して実家に戻ってきた妹と3人で暮らしている。
借家も持っていて、その管理は使用人に任せているという優雅な暮らし。
しかし、若くて美しい妻との関係はぎすぎすしていて、妹とも事あるごとに皮肉の応酬をしている。
さらに家賃を滞納している一家とはもめ事が起きる。

この映画、徹底的に会話劇である。
岩をくりぬいて作られているアイドゥンの書斎での、妹との果てしない論争、妻の部屋での諍い。

それも、日本人のような相手を思いやっての遠回しの会話ではない。
それぞれ皆、抱えている鬱屈した気持ちを抑えようとはせずに、相手をやり込めようと容赦ない言葉を浴びせかける。
すれ違う会話が、3人の心をさらに荒んだものにしていくようなのだ。

と紹介してくると、退屈しそうな映画だと思うかも知れない。
いや、ぜんぜん違うのである。
登場人物たちは、それぞれが人間性の本質的なところを語っている。
観ている者はなるほどなあ、と思ったり、いやそれは違うだろ、と思ったり、自分だったらどのように反論するだろうかと思ったりする。
まるでその会話に参加しているように思わせるリアルさがあるのだ。

カッパドキアの気候は厳しいものらしい。
てっきり暑い地方なのだろうと思っていたのだが、冬になれば一面の雪景色にもなるのだ。

3人の人間性はひと言ではなかなか捉えにくい。
アイドゥンも決して聖人君子などではない。かといってまったくの俗人というのでもない。
カッパドキアでの閉塞的な暮らしに苛立っている妻に、酷い言葉を投げつけたかと思うと、「それがどんな侮蔑の言葉であっても君の声を聞くのは何よりの喜びだ」と言ったりもする。
おいおい、どうなんだよ。

人を愛することとは、人を赦すこととは、生きる目的とは・・・。

3時間あまりを、全く長いとは思わずに見終わりました。
この興味を惹きつけて離さない会話劇の迫力は大したものです。
カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞しています。